8.電子商取引関連
8-1.契約の成立時期
Q8-1-1:電子取引における契約成立の時期は一般的にどのように解するべきでしょうか。
一般に、隔地者に対する意思表示はその通知の相手方に到達したるとき、に発生することが法定されています。(民法97条)。この原理は、電子商取引の世界でも該当しそうです。
例を売買取引において検討してみましょう。
1]継続反復する取引の場合、一方の例えば買い注文を送り、相手方に届いたら注文成立とする方法があります。貿易取引でも反復継続する場合にはできる限り自動化を図りたいので、相手方は品目、金額等をあらかじめセットしておき、一定限度までは無条件に取引に応じる、といったことがありましょう。
登録機関が介在しない2者間取引(いわゆる相対取引)の場合には取引データ(貿易に即して言えば取引の電子文書)がいつ相手に伝達されたか、が問題になります。そこで、EDIのモデル協定書として発表された国連勧告第26号や国際商業会議所(ICC)の電子商取引用標準協定書(最終ドラフト版)では、「受信確認」(Message Acknowledgement) を受信者から送信者に返す方法を推奨しています。
受信者は、到着した電文が、誰から発信されたか、電文が正しい構造を持ち解読できるか、を判断し(コンピューター上で自動的に行われる)、良ければ「受信確認」を自動的に返信します。
ところが、この段階では、まだ受信者の営業的判断、といったものは行われていないので、場合によってはその取引を断りたいことがあります。そのため、受信してから何日(時間で表現)以内であれば拒絶可能、と定めることが考えられます。これは、現在の紙ベースの取引であっても、銀行は書類をいったん受け取りますが、書類に間違いがある場合には返却することと似ています。しかし、送信者から見ると、「書類が戻ってくるまで、いつまでも」買い取ってもらえたかどうかわからない状態では困るので、拒絶可能期間をどれほどの長さにするか、に関心があります。国境を超えて行われる取引ですから、時差や相手国の休日も考慮する必要があります。