しかしながら、電子記録された情報をプリントアウトし、船荷証券及び保険証券の文書として作成した場合は印紙税法の対象になります。但し、船荷証券の場合は謄本としてのアウトプットであれば非課税となります。アウトプットした場合の文書の要件は必ずしも紙とは限りません。預貯金の出入金事実が記録出来る「光・ICカ−ド」である「電子通帳」などは18号文書として一冊に付き200円の貼付を要する文書に該当するとされています。
将来は、電子船荷証券が課税文書とみなされることも否定できませんが、仮に課税しようとした場合は課税上の問題が多く、実際上非常に困難と思われます。例えば、現在の印紙税法の基本通達では、作成が国内ならば、その使用保存が国外でも課税対象であり、逆に作成場所が国外ならば使用行使が国内でも適用外と言うように、作成地が基準となっていますが、その作成及び場所の意味が世界に分散されたコンピューター内で発行される電子船荷証券では曖昧になってきます。
そもそも、印紙税を国際的にみた場合、英国には印紙税(stamp duty)がありますが、米国にはない等、各国により異なります。一般的に、欧米等では船荷証券には印紙税は掛けられていないなど、先進諸国では印紙税を賦課する国が少ないといえます。
また、印紙税法そのものの個別性及び複雑性の問題があります。例えば、SWB(Sea Way Bill)の場合、有価証券ではなく運送状とは言え、運送媒体として船荷証券と類似した機能を果たしますが、1号文書の「運送に関する契約書」としてみなされ、契約金額に応じた高額の課税になっております。このことは日本でSWBが普及しない原因の一つとも言われております。このように現行の印紙税法では個々の文書により課税当局を含めた専門的判断を要するため、手間がかかり、我が国の経済取引が阻害される面もあります。国際的取引においては各国の課税技術上の問題は今後クローズアップされてくると思われます。
世界的に貿易手続の簡易化、低コスト化が言われておりますが、船社、荷主等の貿易業界においては「規制緩和、グローバル化の意味からも、我が国の印紙税を全て撤廃するか、貿易に係る文書は電子化、文書化の如何に係わらず非課税とすべき」という要望が益々強くなると思われます。