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紙の船荷証券であれば、たとえ、引渡と同時に船荷証券は回収したとみなすと運送人が宣言しても、現にそれが回収されていなければ、回収されていないものはされていないとしか言いようがありませんが、電子式船荷証券の場合、そのシステムは、本Rulesも正にそうであるように、それへの参加者(船会社・荷主・金融機関等)の合意により構築されるわけですから、上記のようにみなしてしまうことも可能なのです。

4.昨年実用化された(稼動開始した)Bolero B/Lの場合は、これも既に(Q4-16-3)及び(Q4-17-2)で説明したように、電子式船荷証券の「所持人」は、他の者へ権利を譲渡する場合には、その点をBolero B/Lのシステムの運営者つまりBolero International Ltd.の運営するCore Messaging Platform宛に電子メッセージで通知し、同Platformは、その通知に則って現在有効な電子式船荷証券の内容を記録しているTitle Registryの記録を変更したうえ、新「所持人」にさらに電子メッセージで通知するという形態を採用しており、従って、Bolero International Ltd.(の維持管理するTitle Registry)が、権利移転の経緯をすべて把握している主体であるものの、個々の運送人は、その内容を知ることができません。従って、1]のプロセス、つまり最終「所持人」が、自分がそれである旨運送人に名乗り出(て引渡を求め)るプロセスは確かに必要です。

そして、Bolero B/Lでは、上記CMI Rulesのような引渡があればそれがキャンセルされるという制度になっていないので、最終「所持人」(Bolero B/LシステムではConsignee HolderないしHolder-to-order、(Q4-16-2)参照)から運送人に対し、Bolero B/Lを呈示(surrender)する旨の電子メッセージの送信、つまり上記2]のプロセスもやはり必要です(3.6.(2); Operational Procedures 6.4.6.)。

但し、Bolero B/Lを呈示・提出(surrender)する旨の電子メッセージの送信は、誰でもできる訳ではありません。運送人は知らないにしても、Bolero B/Lシステムそのものとしては、Title Registryにおいて、現在そのような電子メッセージを出せる者(=現在のConsignee HolderないしHolder-to-order)が誰であるかということは分かっているわけですから、本来出せるはずのない者が、そのような電子メッセージを送ってもBolero B/Lのシステムの中ではねられてしまいます。

従って、結局のところは、真にその旨の電子メッセージをだせる者(=現在のConsignee HolderないしHolder-to-order)が、運送人に対して、Bolero B/Lを呈示(surrender)する旨単純に通知すれば、それは2]のプロセスであると同様、1]のプロセスでもあるのです。

これは、紙の船荷証券において、ある者が、自分が船荷証券上の最終所持人である旨、単純に名乗り出て、その際同人が現実に船荷証券を呈示すれば、それで1]2]のプロセスが共に終了するのと同じことです。

 

 

 

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