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4-17.所持人、回収、関係書類の有無

 

Q4-17-1:電子式船荷証券の紛失及びそれに伴う再発行ということはあり得ますか。

1.紙の船荷証券の場合、所持人がそれを紛失する(=その占有を喪失する)と、その者は、そのままでは当該船荷証券に基づく権利を行使できなくなりますので、運送人から、改めて当該船荷証券と同じ運送契約を表象する船荷証券を再度発行してもらう必要が出てきます。

但し、運送人の立場からは、その紛失された船荷証券が第三者の手に渡りその者から裏書の連続ある当該船荷証券を呈示されて貨物引渡を請求されることがあり得るので、再発行をするには、当該紛失船荷証券を法的に無効とする手続(除権判決)をしてもらうか、あるいは、再発行から生じる一切の損害の補償責任に応じる旨の書面(L/G)の提出を求める必要があります。

2.電子式船荷証券の場合、ある者がその「所持人」であるということは、自己が「所持人」となるために電子船荷証券のシステムの中で送受信された電子メッセージ上及びその結果を記録している登録機関上において、その趣旨が記録されているということです。

従って、紙の船荷証券の紛失に近い事態としては、さしあたり、その記録の全部又はその「所持人」の記録が滅失するということが考えられます。

しかし、そのような記録の滅失は、一般的には、電子式船荷証券のシステム自体の故障により生ずる問題のはずであって、所持人側の一方的な作為・不作為(管理不充分等)で占有を失うという紙の船荷証券の紛失とは事情が異なります。他方、このような記録が滅失したからといって、紙の船荷証券のように、第三者が「所持人」たる地位を取得してしまうリスクが一般的にあるわけではありません。万一そのようなことがあるとすれば、それは、「所持人」の情報が真の「所持人」から無権利の第三者に不正に書きかえられたという、コンピュータ・ネットワーク・システムのセキュリティ一般の問題にやはり帰着します。従って、これら不測の事態への対処法は、リスク分担の問題として、電子式船荷証券が発行される実際的前提であるところの、電子式船荷証券の発行・流通・回収のシステムについての、船会社・荷主・金融機関等の参加者そして当該システムの設営・運営者との間の包括的な契約等によって規律されるべき事項であって、所持人が一方的に上記1.のような補償状を出す筋合ではないと考えられます。

 

 

 

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