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4-16.裏書譲渡

 

Q4-16-3:電子式船荷証券の「裏書譲渡」はどのようにするのでしょうか。

1.紙の船荷証券に基づく権利は、所持人がそれを裏書することだけにより譲渡することができます。この性質は、船荷証券の輾転流通・貿易決済における利用を可能にするために必須かつ最も根本的要件です。

実はこの点を明確に規定した国際条約はありません。しかし、紙の船荷証券が世界中をこの方式で裏書譲渡され輾転流通していることは厳然たる事実であり、世界の殆どの国で同様の区別及び効力を認めているものと考えられます。わが国では、商法第519条で準用される手形法第14条第1項で認められています。英国においては、船荷証券の裏書譲渡の効力(物権的効力)についてのリーディング・ケースとして常に取上げられるLickbarrow v. Mason事件は、1787年〜1794年の判例であり、既にそこでも船荷証券上の権利が裏書により譲渡可能なことは、当然の前提となっています。米国では、Federal Bill of Lading Act 1916(SS. 28, 31, etc.) (但し1994年以降はThe Law Revision Title 49 Act, 1993により改訂された49 United States Code 80105, etc.)によって規定されてきております。

2.電子式船荷証券の場合に、それを「裏書譲渡」するということを、形式的に真似れば、それは、その現在の「所持人」(「裏書人」)から次の「所持人」(「被裏書人」)たるべき者宛に、当該電子式船荷証券の情報及びそれに基づく権利を譲渡する旨のメッセージを送るだけということになりそうです。システム的には、これを効率的かつ確実ならしめるということが(電子商取引一般の問題として)大きな問題ですが、法的には単純なことです。

しかし、当然のことながら、ただこのメッセージを送っただけで、当該電子式船荷証券(に基づく権利)が「裏書人」から「被裏書人」に有効に移転することを、そしてその移転が発行者=債務者である運送人をも拘束することを認める立法は、現在のところないと思われます。しかし、「裏書譲渡」が「裏書譲渡」たる所以は、そのような効力が認められるからこそであり、そのためには、その効力を、関係者間の契約に基づく拘束力を通じて実現しなければなりません。その意味で、電子式船荷証券が裏書譲渡される実際的前提もまた、電子式船荷証券の発行・流通・回収のシステムについて、船会社・荷主・金融機関等の参加者、そして電子式船荷証券のシステムの設営・運営者との間で、包括的な契約をあらかじめ取り交わすということ37になります。

 

37 その合意に則って電子式船荷証券が裏書譲渡されるということ。

 

 

 

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