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(Q4-16-3)で説明したとおり、本Rulesの下での電子式船荷証券の所持人の権利の譲渡は、旧所持人から運送人経由新所持人へのその旨の電子メッセージでの連絡、及び、これに併せての旧所持人の有する個人キーの破棄と新所持人へのその発給が運送人により行われる、という形態をとっていますが、新所持人に伝達される情報(あるいは、新所持人ひいては現在の所持人が同Rules下の電子式船荷証券システムにおける何らかの方法で知りえる情報)に、旧所持人及びそれ以前の同Rules下での権利の譲渡の経緯(旧所持人以前の所持人の氏名)という情報をも含まれるのか、同Rulesの解釈が必ずしもはっきりしていないからです。

同Rulesには、運送人から新所持人に伝達される情報が一応列挙されていて(Art. 7.b.で引用される Art. 4.b.)、そこには確かに上記情報は入っておらず、その点から、本Rules下では、新所持人=現所持人は上記情報を一切知りえないシステムしか作れないのだと結論付けてしてしまえば、本Rulesは、いわば、持参人式の電子式船荷証券を構築した如くであり、裏書(的なもの)があり得るとすれば、最初の所持人たる荷送人が白地式裏書をすることのみが許され、その後の所持人は常に単に船荷証券を引き渡すことによる譲渡に相当する譲渡しかできない、ということになります。

他方、同Rulesの上記条項(Art. 4.b.)に上記情報が入っていないのは、上記条項自体はもともと最初の電子式船荷証券発行時に記載すべき情報を規定したものであり(条項の位置からしてこのことは明らかです)、その後の権利移転の際(Art. 7.b.が適用される際)に上記情報をも伝達することは排除されてないと解釈することも可能です。そして、その解釈を前提に、上記情報が常に伝達されるとすれば、本Rulesは、いわば、常に記名式裏書しかできないシステムということになります。

旧所持人の選択によって、自分の情報をその直後の所持人よりさらに後の所持人にも伝達されるようにするか伝達されないようにするか両方可能であるということにすれば、本Rulesは、初めて記名式裏書・白地式裏書の両方を許容するシステムということになります。

5.昨年実用化された(稼動開始した)Bolero B/Lの場合、そのRulebookによれば、その「所持人」(Holder)には、原則的形態として1]Holder-to-order、2]Bearer Holder、の二種類があります。1]は、Bolero B/L作成時であれば運送人(Carrier or Originator)により、その後であれば自分の前「所持人」たる1]2]いずれかにより「指名」(Designate)されます。2]は、Bolero B/L作成時であれば運送人(Carrier or Originator)による、その後であれば自分の前「所持人」たる1]2]いずれかによる「白地裏書」(Blank endorsement)なる行為により「指名」されます。

 

 

 

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