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従って、電子式船荷証券の「白地式裏書」を考える際にも、電子式船荷証券上の権利を譲渡する旨のメッセージは、やはり特定の誰か(特定の被裏書人)にしか送付され得ません。不特定の者への譲渡なぞできないことは、よく考えれば当然でもあります。

むしろ、電子式船荷証券において両裏書を区別しえるシステムを構築するには、まず、紙の船荷証券における両裏書の機能的差異を明らかにしたうえで、それを再現するようなシステムを考える必要があります。

両裏書の決定的な機能的差異は、被裏書人の氏名の開示に関連しています。すなわち、指図式裏書の場合、被裏書人の氏名が証券上に明記され、さらに、裏書の連続を確保するには今度は被裏書人が再裏書する必要がありますから、再被裏書人(=被裏書人の裏書における被裏書人)より後の所持人や運送人との関係でも、当該船荷証券が当該被裏書人を経由してきたものだということが、常にわかってしまいます(無論、再被裏書人との関係、あるいは被裏書人が自ら運送人に対し権利を行使した場合における運送人との関係では、彼らは被裏書人の行為の相手方そのものですから、それはいずれにせよわかりますが)。これに対し白地式裏書の場合、もし、被裏書人がさらにそれを譲渡する場合に、裏書譲渡という方法をとらず、そのまま証券を交付するだけという方法をとれば、被裏書人の名前は証券面上に全く出ないことになりますから、再被裏書人より後の所持人や運送人との関係において、当該船荷証券が当該被裏書人を経由してきたものだということを示さないことが可能です(例外につき同前)。

白地式裏書を受けた被裏書人が、裏書譲渡という方法をとらず、そのまま証券を交付するだけという方法でも船荷証券を譲渡し得ることについては、わが国では、商法第519条で準用される手形法第14条第2項第3号で認められ、英国では、例えば1884年のSewell v. Burdick事件の判旨でその旨が確認されており、米国では、Federal Bill of Lading Act 1916(S. 27) (但し1994年以降はThe Law Revision Title 49 Act, 1993により改訂された49 United States Code 80104 (a)(2))によって認められてきております。

これを前提とすれば、電子式船荷証券の譲渡の場合も、要するに、再譲受人よりさらに後の所持人や運送人との関係で、当該電子式船荷証券が当該譲受人を経由してきたことがわかるような譲渡の方式(これが指図式裏書に相当)と、わからないような譲渡の方式(これが白地式裏書に相当)を考えれば良い、ということになります。

4.かつて1990年に、万国海法会(CMI)が抽象的な電子式船荷証券の発行・流通・回収のメカニズム(換言すれば電子式船荷証券における関係者の権利義務関係の抽象的モデル)として制定したCMI Rules for Electronic Bills of Ladingの場合、上記の点は、必ずしもはっきりしません。

 

 

 

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