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4-13.特定国による法的効力否定の場合

 

Q4-13-1:もし、ある国において、凡そ電子式船荷証券というものの法的効力が認められず、電子式船荷証券の「発行者」「所持人」が電子式船荷証券に基づく権利義務を一切否定されてしまったらどのようなことになりますか。

1.正確に言えば、そもそも、現在電子式船荷証券それ自体に特殊な「法的効力」を認めている20国はないだろうと思われます。むしろ、電子式船荷証券が発行される実際的前提は、(Q4-10-1)で説明したように、電子式船荷証券の発行・流通・回収のシステムについて、船会社・荷主・金融機関等の参加者、そして電子式船荷証券のシステムの設営・運営者との間で、包括的な契約をあらかじめ取り交わすということ(その合意に則って電子式船荷証券が発行されるということ)になっています。

従って、電子式船荷証券の「発行者」「所持人」が電子式船荷証券に基づく権利義務といっても、窮極的ないし理論的には、それは、上記契約(及びその下での個別の電子式船荷証券「発行」「取得」行為)に基づく義務に過ぎません。他方、書面作成の要求その他の限定はあり得るにせよ、契約つまり合意による権利義務が法的に拘束力をもつという大原則自体を否定する国はないと思われますから(万一そういうことがあれば、そんな国ではおよそ契約なぞ存在しえないことになります!)、結局、電子式船荷証券の「発行者」「所持人」の電子式船荷証券に基づく権利義務が一切否定されてしまうという事態は、まず考えられないと思われます(繰り返せば、万一そういうことがあれば、それは上記の包括的な契約の拘束力自体の否定を意味し、そんな国ではおよそ契約なぞ存在しえないことになります!)。

2.現実にあり得るのは、上記の包括的な契約条項の一部が、日本法で言うところの公序良俗違反(民法第90条)的な理由によりその効力を否定されることでしょう。このようなことがどの程度の可能性で発生するかは、個々の包括的な契約つまり電子式船荷証券システムの内容にかかわることであり、一義的には何とも言えないところです。

1]昨年実用化された(稼動開始した)Bolero B/LのRulebookは正にその包括的な契約の例であり、また、2]現在通産省の予算事業として進行中の国産の電子式船荷証券プロジェクト21であるいわゆるTEDIプロジェクト22において、当該システムへの参加者全員が拘束される枠組として構想・策定中のTEDI共通規約も同様です。それらの各条項に対する各国裁判所の将来の動向が注目されます。

 

20 その発行・流通・回収につき紙の船荷証券と同一の地位を認めている。

21 正確には貿易関係書類全体の電子化プロジェクト

22 「貿易金融EDI共通基盤システム」開発プロジェクト及び「TEDI共通規約」作成プロジェクト

 

 

 

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