日本財団 図書館


6.昨年実用化された(稼動開始した)Bolero B/LのRulebookでは、実は3.で述べたような「規定」が具体的にあります。すなわち、Bolero B/LのHolder-to-order(=紙の船荷証券の記名式裏書譲渡を受けた所持人に相当)及びConsignee Holder(=紙の船荷証券がいわゆるstraight B/Lである場合の荷受人に相当)は、その指名を受諾した段階(=紙の船荷証券を現に受領・所持した段階に相当)から、運送契約上の義務を負担する旨が明記されています(3.5.1.(2))。この義務を負担したくなければ、そもそも指名を拒絶する(=紙の船荷証券を突っ返すことに相当)か、Pledge Holder(=紙の船荷証券を担保として預かっている状態に相当)ないしBearer Holder(=紙の船荷証券の白地式裏書を受けて裏書に全く名前の出ない形の所持人に相当・但し船荷証券上の権利を行使するには一旦自分をHolder-to-orderに変える要あり)という方式の「所持人」になる(その方式で指名してもらう)ことが必要です(Holder-to orderとBearer Holderの差については (Q4-16-2)も参照)。これはこれで、非常に明確です。ただ、既に述べたとおり、紙の船荷証券の場合は本来曖昧ですので、明確ということで、逆に紙の船荷証券とずれがあります。

ただ、実際上は、(Q4-17-2)において説明するとおり、運送人には、誰が現在のBolero B/Lの「所持人」であるかは原則的にはわからず、わからない人に対して権利があると言っても始まらず、他方、それがわかる場合は、原則的には、上記2.で英国のCarriage of Goods by Sea Act 1992において船荷証券所持人が義務をも負担する場合として説明した、1]貨物の引渡を受けた場合、2]貨物の引渡を要求した場合、3]貨物につき運送人に対し運送契約上に基づく請求をした場合等になるでしょうから、この英国のActを前提とする限りにおいては、結局はさほどの差異は生じない可能性があります。しかし、何らかの形で(Bolero B/Lのシステムの範囲外で)偶々Holder-to-order等が判明すれば、差異がやはり生じます。何れにせよ、紙の船荷証券の場合は本来曖昧であるはずの問題について、敢えてこのようなきちんとした答えを出す(区分けをする)ことについては、理論的な評価の分かれ得るところでしょう。

7.現在通産省の予算事業として進行中の国産の電子式船荷証券プロジェクト18である、いわゆるTEDIプロジェクト19の場合、その法的な枠組を規定するTEDI共通規約も作成途上ですので、まだ何とも言えません。

 

18 正確には貿易関係書類全体の電子化プロジェクト

19 「貿易金融EDI共通基盤システム」開発プロジェクト及び「TEDI共通規約」作成プロジェクト

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION