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4-12.紙の船荷証券に関する条約・法令の適用の有無

 

Q4-12-1:電子式船荷証券において、その「所持人」が船荷証券上の義務(未払運賃・保管料の支払義務等)を負担するのはいつからになりますか。あるいは、従来の船荷証券におけるその場合の効果に関する条約・法令の規定は適用されますか。

1.前段の質問に対する正確な答は、電子式船荷証券だからといって一義的に決まるものではなく、むしろ逆に、電子式船荷証券のシステムが、当該電子式船荷証券の「所持人」がいつから当該電子式船荷証券上の義務を負担するように設計・構成されているかによります。

2.そもそも紙の船荷証券ですら、その所持人が一体いつの時点から船荷証券上の義務(未払運賃・保管料の支払義務等)を負担するのかについては、そもそも国際条約等で国際的に統一が図られている訳ではなく、各国法に委ねられているということに注意する必要があります。

例えば、数年前にこの点を明確にした立法例が、英国のCarriage of Goods by Sea Act 1992です。そこでは、船荷証券所持人は、1]貨物の引渡を受けた場合、2]貨物の引渡を要求した場合、3]貨物につき運送人に対し運送契約上に基づく請求をした場合等には、船荷証券上の義務も負担する旨が規定されています(S. 3(1))。他方、わが国では、商法に、貨物を受け取った荷受人(必ずしも船荷証券の発行されている必要はなく、とにかく事実として貨物を受け取った者)は、未収運賃・保管料等の支払義務を負う旨規定され(国際海上物品運送法第20条第1項、商法第753条第1項)、さらに、所持人が船荷証券に基づき貨物引渡を受けようとする場合には、それら義務につき運送人から留置権を以って対抗され、引渡を受けるにはそれらを弁済せざるを得ないということは明らかですが、それ以外の規定はないので、英国の上記法律における2]3]の場合に果たして義務を負うのかは、実は明確ではありません。

3.さて、電子式船荷証券が発行される実際的前提は、(Q4-10-1)で説明したように、電子式船荷証券の発行・流通・回収のシステムについて、船会社・荷主・金融機関等の参加者、そして電子式船荷証券のシステムの設営・運営者との間で、包括的な契約をあらかじめ取り交わすということ(その合意に則って電子式船荷証券が発行されるということ)です。従って、論理的には、例えば、その契約中に、電子式船荷証券の「所持人」は、これこれの時点から当該電子式船荷証券上の義務を負うといった具体的規定をおくこともあり得ます。

 

 

 

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