第二は、さらに進んで、そもそも電子式船荷証券のシステムに参加する契約自体において、同システムの中で各船会社が発行する電子式船荷証券の裏面約款の内容は電子式船荷証券のシステムの中又は外(たとえば各船会社のホームページ)で所持人が自由に閲覧でき、かつ参加者は(原則的には)それに拘束される旨規定してしまう方法です。データ交換における無駄を省くという点からは、これがいちばん合理的です。
因みに、1]かつて1990年に、万国海法会(CMI)が抽象的な電子式船荷証券の発行・流通・回収のメカニズム(換言すれば電子式船荷証券における関係者の権利義務関係の抽象的モデル)として制定したCMI Rules for Electronic Bills of Ladingでは、当事者が容易に知り得る運送約款を運送人がレファレンスしたときは、当該約款は運送契約の一部になることが合意される旨規定されており(Art.5.a.b.)、2]昨年実用化された(稼動開始した)Bolero B/Lでは、そのRulebook自体において、送信される電子式船荷証券のデータ中に外部の運送約款が摂取されることの明示、並びに、当該約款が閲覧可能な場所の開示を運送人に要求しており(3.2.(1))、何れも、第一・第二の方式を統合したものと言えます。
他方、3]現在通産省の予算事業として進行中の国産の電子式船荷証券プロジェクト12であるいわゆるTEDIプロジェクト13の場合、各運送人の約款の登録・更新もシステム内で行うことが予定されているようですが、上記の第一・第二の方式の何れかないし両方になるのか否かは未だ詳らかではありません。
4.なお、第二の方式の場合、当該契約に、運送人が上記の方法で開示する約款に荷主が拘束される旨あっさりと謳われていると、荷主サイドから見れば、たとえ包括的ではあれ、運送人が一方的に作成・開示する運送約款への拘束に文書で合意することになり、やや問題があると言えるかも知れません。紙の船荷証券の場合、所持人は、それを取得して権利を行使するとは言え、その裏面約款に無限定に拘束される旨明示的に約束までしていない(それへの拘束はあくまで黙示的合意と構成される)のに対して、上記ではそれよりさらに歩を進めていることになるからです。
1]前記CMI Rules for Electronic Bills of Lading(Art.5.1)や、2]前記Bolero B/LのRulebook (3.2.(2))では、各当事者ないしユーザー(つまり参加者・実質的には荷主)は、摂取により当該約款が運送契約の一部となることに了解する、運送契約の当事者を拘束するものとなることに合意する、とあっさりと謳っていますが、この点からは若干問題とする余地があるようにも思われます。
12 正確には貿易関係書類全体の電子化プロジェクト
13 「貿易金融EDI共通基盤システム」開発プロジェクト及び「TEDI共通規約」作成プロジェクト