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なお、文書を自分で持っていればそれを裁判所に提出すればいいのですが、自分が持っていない場合、一定の要件が満たされれば文書提出命令の申立をすれば、裁判所が文書の所持人に文書の提出を命令してくれます(第220条以下)。

自由心証主義

(1)訴訟(証拠調べ)は、証拠から一定の事実を認定して、その事実によればどのような法的判断が可能か、とうい形で進行していきます。この時に、証拠資料から裁判所が論理法則と経験則に従って自由に事実認定・判定ができることを自由心証主義といいます。第247条(自由心証主義)の規定するところです。論理法則とか、経験則とかは、「健全な常識」をさすものです。つまり、自由心証主義とは、常識に即して事実認定しなさい、ということです。かつては、我が国でも法廷証拠主義(一定の証拠があれば一定の事実を認定しなければならず、その証拠が欠けていればその事実の認定が禁止される、というもの)が取られていました。自由心証主義とは、裁判官の常識を信じたものだといえるでしょう。

(2)このように、裁判所は証拠から自由に事実認定することができますので、一方当事者が提出した証拠からその当事者に不利益な(つまり相手方当事者に有利な)心証を得ることもあるでしょう。自由心証主義はこれも許容しています。これを証拠共通の原則といったりします。

(3)自由心証主義だからといって、それは裁判官が好き勝手に事実認定をしてもいいということではないことはもちろんです。

事実認定が常識に反する場合は、経験則違反ということで違法となり、控訴・上告によってその認定が間違っているとされることがあります。例えば、借用証があればお金を借りたと認定するのが常識に合致することです。借用証があり、しかもその記載の信用性を覆すに足りる証拠がないのにお金を借りていないと認定したりすると、それは経験則に反するといわれてしまいます。

(註)法定証拠主義:

陪審制度などを導入している英米法系の国において採用されている例が多い。他方、日本を始めとする大陸法系の国においては、自由心証主義を採用する例が多く見られる。いずれのアプローチを採用しているかによって、電子署名や認証機関の発行する電子証明書の法的な位置付けに対する考え方は大きく異なってくるところであり、今後国際的にどちらのアプローチが主流となっていくかについて注意深く見守る必要がある。

 

 

 

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