4-7.債権の二重譲渡問題等
Q4-7-2:電子B/Lに関する「取極め」に就いての各種の検討の中には、電子B/Lの移転を、「債権者の交替による更改」とか、英国法における“NOVATION”などに依って説明している例をよく見かけますが、これは、どういうことですか?
「債権者の交替による更改」とは、電子B/Lの移転に伴い、貨物引渡請求権が移転していくことの説明として、(「貨物引渡請求権」という債権が譲渡されるという構成を取る代わりに、)
最初、債権者荷送人「A」と 債務者運送人「C」との間の債権・債務関係であるものが、電子B/Lが荷送人「A」から次の権利者「B」に移転されると、「B」と運送人「C]との間の債権・債務関係に変化するのだ、との構成を取ることです。
但し、この考え方を取っても、余り問題解決の役には立たないのではないかと思います。例えば、
1]わが国の法律によれば、(指名債権の譲渡の場合と同様に)対抗要件として、確定日付ある証書が必要であること。
民法515条
「債権者の交替に因る更改は確定日付ある証書を以ってするに非ざれば之を以って第三者に対抗することを得ず。」
2]運送人に対する債権者は「更改」に依って、交替することになるが、運送契約は、双務契約であり、「運送人に対する荷主の債務」はどう扱うのか? 特に、電子B/Lが移転される以前の事由、例えば、
‐荷送人の貨物に関する申告が誤っていた為、運送人が被った損害国際海上物品運送法8条)
‐危険品に起因する運送人の損害(国際海上物品運送法11条)
‐CY受コンテナ内の積付不良に起因する運送人の損害
などに関し、誰が責任を負うのかを明確にしておく必要が有ります。
特に“NOVATION”の場合、契約上の地位の交替の様な概念であり、NOVATIONにより、従来の契約相手、荷送人の契約上の地位が消滅し、次の電子B/L権利者が、運送契約上の地位を引き継ぐ様な考え方になっている様ですので、上記の様な場合、荷送人ではなく、(又は荷送人と重畳的に?)電子B/Lの権利者が、賠償責任を負うことになるのではないでしょうか?
この点、わが国に於いては、船荷証券の裏書・交付により移転するのは「貨物引渡請求権」であるとするのが有力説であるのに対し、英国における、“BILL OF LADING ACT,1855”以来の考え方は、船荷証券の移転とともに、権利(RIGHT)のみならず、義務(LIABILITIES)も移転し、あたかも契約上の地位が移転したかの如く考えるという様な差異が有る様ですのでこれらの点も、「取極め」の作成や解釈に於いて注意を要するのではないかと思います。