3-1. 電子商取引と船荷証券に関する問題
Q3-1-5:「対抗出来ない」とはどういう意味ですか?どうして、それが問題なのですか?
「対抗することを得ず」とは、既に成立した権利関係を他人に対して主張出来ないということです。
或る者と或る者との取引と、他の第三者の利害が衝突することは決して稀では有りません。動産、不動産、債権が二重譲渡されることも有るでしょうし、債権が譲渡された事実を債務者が知らないとしたら、債務者が二重払いの危険を負うことにもなるでしょう。
その為、何れの国も、その様な対第三者の関係に配慮して、「対抗要件」等の法制度を作っており、我国の法律を例にとれば、
不動産物権変動の対抗要件…登記制度
動産物権…「引渡し」を対抗要件とする制度
債権譲渡…指名債権譲渡の対抗要件の制度
債務者の承諾に関する制度
流通証券の制度
等を設けている訳です。
最近、或るヨーロッパの事件を目にしました。ドイツ法人である売主が、オランダ法人である買主に物品を販売し、売掛代金債権確保の為に、所有権を留保すると共に、(当該オランダ法人は、その物品を、更にオランダ人に転売する予定でしたので)当該オランダ法人がSUB-BUYERであるオランダ人に対して持つ代金債権の譲渡を受けたケースで、その債権譲渡契約は、当事者間の合意により、「ドイツ法を準拠法」にしていたところ、オランダ法人は破産し、そのLIQUIDATOR(法人清算人)が、当該債権譲渡を無効とし、オランダ法人への支払を求めて、訴訟を提起し、結局、SUB-BUYERはオランダの裁判所への代金供託を余儀なくされたというものです。
問題の債権譲渡契約は、当事者間では当然有効ですが、債務者を含む第三者との関係では、ドイツ法が適用される場合は有効であるが、オランダ法が適用される場合は無効である為、紛争になった様です。
国境をまたぐ債権譲渡の問題が如何に複雑な問題を孕むかを如実に示す例と言えます。船荷証券という流通証券を利用している限り、余り心配の要らない問題ですが、証券を排し、電子B/Lを利用する場合、(流通証券という方式を採らない)債権譲渡そのものですので、極めて注意を要する問題です。