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更に、登録機関では、電子船荷証券の発行者(船会社)とともに、権利が誰から誰に渡ったか、を記録します。すなわち、ここでも「中立的な第三者」の機能が発揮されています。

1990年に万国海法会(CMI)が制定した電子式船荷証券についてのルール(CMI Rules for Electronic Bills of Lading)では、この第三者機関として運送人を予定していましたが、1994-95年のいわゆるボレロ実験を通じて、貿易関係者から取引に関与する特定の事業者に取引の全貌が明らかになることに対し反対の意向が明らかとなり、今日では「中立的な第三者」の必要性が認識されています。

以上から明らかなように、貿易に特徴的な運営体は中立的な第三者である登録機関です。また、登録機関の運営者は、特定の利害から中立的であることが望まれます。その意味では任意団体等も候補となり得ます。しかし、登録機関は巨額の貿易取引の権利移転に関係するのですから、絶大な信用力が必要です。

また、その費用は、利用料として広く利用者に課金されることになると思われます。

電子式船荷証券の先駆として、かつて1980年代に米国系の某銀行が中心としてSEADOCシステムというプロジェクトが実験されたことがあります。しかし上記で述べたとおり、実は金融機関も本来は「参加」者の一人でしかなく、上記のような立場にある者ではなかったため、結局このプロジェクトは実用化には至らなかったと言われています。

他方、昨年実用化された(稼動開始した)Bolero B/Lの設営・運営主体は、世界のフォワーダーの参加する保険組合として実績を有するThrough Transport Club、及び世界の金融機関等間の電子的決済において実績を有するSWIFTのジョイントベンチャーBolero International Ltd.(bolero.net)であり、一民間プロジェクトではありますが、とりあえず上記の要求を充たすと言えます。

現在通産省の予算事業として進行中の国産の電子式船荷証券プロジェクト2であるいわゆるTEDIプロジェクト3の場合、まだ、当該電子式船荷証券の設営・運営主体がどのような形になるのか、少なくとも一般には公表されていませんが、電子式船荷証券の権利移転の登録主体としてTEDI Repository Service Providerなる機関が想定されており、この機関が、本プロジェクトによって開発される電子式船荷証券(TEDI B/L?) のシステムの設営・運営主体ということになろうかと思われます。

 

2正確には貿易関係書類全体の電子化プロジェクト

3「貿易金融EDI共通基盤システム」開発プロジェクト及び「TEDI共通規約」作成プロジェクト

 

 

 

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