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また、CMI規則では、運送契約の約款などは全部伝送することなく、既存の書面形式の船荷証券に記載されている約款を参照せよというように、レファレンスする形式で情報を伝送することになっており(同第5条)、また、当事者は当該契約が国内法によって要求される書面によるものではないことを抗弁として主張することができないこと(同第11条)になっている。これらの点から、各国の船荷証券に関連する国内法がこの規則の効力を認めない恐れが多分に考えられます。

 

CMI規則における登録機関

本規則では、運送契約に関するデータを保存・登録し、現権利者からの通知を受けて新権利者にデータを伝送する登録機関に、運送人がなることになっています。作業部会では、最初は登録機関に銀行を想定していたのですが、1982年にチェース・マンハッタン銀行が構想し、参加者に呼びかけていたSEADOCシステムという構想でも、登録機関は同銀行でした。しかし、SEADOCシステムが挫折したのは、資金の流れと物の流れが銀行に把握されるのを企業が嫌がったからであるという点について、CMI作業部会の意見が一致し、運送人が登録機関となる方が企業の抵抗が小さいであろうとの判断になったからであるといわれています。また、運送契約上の債務者である運送人に対して権利移転の通知がなされるシステムは、法的にみれば、第三者(銀行)に対して通知がなされるシステムに比べて、指図による占有移転(民法184条)がなされたと法律構成しやすいというメリットもあります。

しかし、1]経済的観点から、運送人が当該システム構築に要する資金的負担があり、2]運送契約の当事者である運送人が登録機関になると、データを自己の有利に改ざんするおそれがないかという問題が考えられます。二番目の問題は、技術的な方法で改ざん防止を行うことが可能です。

物権への不言及

船荷証券は、大陸法では物権的効力のある有価証券であり(商法575条、776条、国際海上物品運送法10条)、英米法では権原証券であって、いずれにせよ、その占有移転は、運送品引渡請求権および運送品支配・処分権という債権を移転させるにとどまらず、運送品自体の占有移転の効果をも生じさせます。しかし、船荷証券を使用しない場合、物権移転(運送品の占有移転)をいかなる方式で生じさせうるかについて、各国の物権法は異なっています。

CMI規則は、すべての国で運送品の物権移転を生じさせる形で国際的統一規則を作ることは困難であるとして、それを取り扱うことを最初から断念しました。

 

 

 

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