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いずれの作成方法をとるにせよ、社内の現場で対応する人の意見や利用者の意見を十分に調査した上で取り組む事が大切である。

前述のアンケート結果では、接遇・介助教育を実施しない理由について、「実施のための情報がない」という回答が最も多かった。接遇・介助教育の必要性を認めていても、具体的なマニュアルの作成においては、情報収集の面で足踏みしていることが明らかになっている。上記の表に整理した通り、マニュアルの作成においても独自で整備する場合には情報収集などの点が、特に小規模な事業者にとっては課題になりやすいと考えられる。

こうした実態から、接遇・介助の必要事項を総合的にまとめた教材が必要でありながら、実際の作成段階では適切な情報収集が課題になり、結果としてマニュアルに必要な項目が十分に取り入れられないことが想定できる。

 

2]講師の確保

 

接遇・介助教育を実施する際に、高齢者・障害者への対応について十分な知識を持ち、適切な指導ができる人材を確保することが不可欠である。

講師の確保においても大規模な事業者では教育部門で独自の人材で対応できる反面、小規模な事業者では教育担当の人材を擁することはコストの面からも困難である。独自で担当者を配置する場合、交通事業者としては専門的な知識を有していても、高齢者・障害者への介助という点では十分でない場合も考えられる。

これまで述べてきた教育の実施方法を見ても、外部の専門家等に講師を依頼している事例が多い。特に高齢者・障害者への対応では、高齢者・障害者施設の職員など専門的なノウハウを蓄積した人材の協力を得る事が大切である。こうした分野の専門家を積極的に活用する仕組みが必要であり、交通事業者と福祉施設などの連携により、安定的に講師を確保できるネットワークづくりなどが考えられる。一部の事業者では研修の際に福祉施設等の体験実習を取り入れていることから、日常的な協力関係を築いている事例もある。先進事例に学び、事業者内部での講師レベルの人材の育成と同時に、今後はより効果的な連携の在り方を検討する必要がある。

 

3]実施方法の工夫

 

高い教育効果を得るためには、教材の内容の適切さと同時に実施方法の工夫が挙げられる。教育の受講者が興味を持ち、必要性を痛感し、主体的に参加できるプログラムが必要である。事業者へのアンケートやヒアリングにおいても、施設実習や高齢者の疑似体験などを取り入れて受講者の体験を重視しているプログラムが見られる。マニュアルによる座学ではカバーしきれない部分への対応である。

ともすればテキストによる座学中心で受講者の興味を喚起できないことも考えられるため、マルチメディアの利用による多角的なアプローチ、体験実習や高齢者・障害者とふれあう時間を設けるなど五感を駆使できる研修内容が必要である。例えば、アメリカなどではコンピューターを利用したロールプレイによる研修方法などを一般的に取り入れており、新たなメディアを活用した方法も検討する必要がある。今回の調査では現場の交通従事者からの意見聴取を行っていないため詳細な点については言及できないが、以下のような点を考慮した実施方法が効果的と考えられる(表2-4-3)。

 

 

 

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