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e. 教育実施のための情報の交流が求められている

 

教育を実施していない場合の理由については、現在教育を「実施していない」「検討中」と回答したいずれの場合でも、主として「実施のための情報がない」という理由が多く、広く教育の必要性及び、わかりやすく具体的な中身を提示していく必要性があると考えられる。そのため本プロジェクトにおける統一的なマニュアルの整備が重要である。その際、教育を代行してくれる機関や、使用効果が得られる教材、教育の実施方法等の情報なども整理して提供すれば、規模の小さい事業者などは独自に整備する場合に比べコストと手間が省けるため有益である。

 

f. マニュアル整備の必要性

 

接遇・介助教育のマニュアルが整備された場合の使用意向については、回答者の半数が「使用したい」と答えている。既に教育を実施している事業者でも18社が使用したいと回答している。また、使用意向について「わからない」と回答した事業者も2割あり、汎用性の高いマニュアルの整備ができれば、ニーズが高まると考えられる。

 

g. 事業種別で異なる接遇・介助教育に対する状況

 

このアンケートから、事業種別に置かれている状況の違いが明確になった。鉄道、バスでは比較的規模が大きい事業者が多いことから、従来の研修プログラムで対応している例が多く見受けられた。これまでの研修内容に高齢者・障害者への対応を付加したもの、車いすやそれを乗降させるためのリフト機器の取り扱いを付加したものが多く、特に長い時間を費やした研修は行っていない。

タクシー事業者は、福祉輸送を行っている事業者を選定したことも大きく影響し、ホームヘルパー資格をはじめとして教育に時間をかけている状況がある。個別交通として、特定の利用者に対応することや、介護保険開始により、新たに運転以外のサービスの領域への参入など、業務として接遇・介助のプログラムが直結することが大きな要因と考えられる。

バスにおける接遇・介助教育が鉄道、タクシーに比べ若干出遅れているのが課題といえる。また、教育を実施する場合でも、車いす用リフトの扱い方の講習に終始する事なく、高齢者・障害者への理解を深める内容について十分な時間を割り当てる必要がある。

このように、事業種別に取り組み状況に大きな差がある状況を踏まえると、公共交通事業の経営者の接遇・介助教育に対する理解増進を高める必要があると考えられる。また、現在、策定作業が進められている「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(案)」(平成12年2月15日閣議決定、通称交通バリアフリー法)等により、接遇・介助教育の実施を明確化するなど、社会的な認知を得る必要性が高いと思われる。

 

 

 

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