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介助(Assistance)とは、障害を持った乗客本人が申し出てきた様々な援助に必要に応じて対処する方法である。一般には、介助というと食事、着替え、入浴、歩行など生活活動の円滑化のための支援であるが、交通では、例えば、車いすを押して段差を越える、移動補助機器の操作・取り扱い、視覚障害者にパンフレット等の情報を音読で伝えること等が挙げられる。すなわち、移動に際し、行き先案内、切符の買い方、乗降車等の円滑化を図る事である。

欧米では、こうした介助のうち、特に車いすの固定などの安全確保に関する部分をセキュアメント(Securement)と呼んでいる。

接遇と介助の関係の概念を図1-2-1に示した。接遇は包括的な概念で、介助はその一部と考える事ができる。しかし、接遇の心がまえがなければ適切な介助は難しく、介助の知識がなければゆとりのある接遇ができないという点で、両者の境界線は厳密ではなく重なり合う部分があると理解することができる。

なお、本報告書では日本における教育を「接遇・介助教育(プログラム)」、海外調査を行ったアメリカ、カナダにおける教育を、接遇と介助の意味を含めて一般的な呼称である「センシティビティ・プログラム」として統一して表記する。

 

図1-2-1 交通事業者における接遇と介助の関係の概念図

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1-3 接遇・介助教育の必要性

 

21世紀を目前に、わが国は未曾有の超高齢社会に突入し、2015年には4人に1人が65歳以上の高齢者になると予測されている(厚生省平成9年推計値)。また、障害を持つ人は、統計では在宅で300万人いるといわれている(肢体不自由、内部障害、視覚障害、聴覚・言語障害含む)。実に多くの人たちが、外出し社会参加したいというニーズを持ちながらも、移動する際になんらかの困難を感じている。ハードの整備が次第に進んだとしても、実際の現場における運用(オペレーション)に関わる人が、高齢者や障害者にたいして十分な知識や理解をもって対応しなければ、円滑な移動は望めない。

しかし、高齢者・障害者の社会参加の機会を保障するための基盤である移動と交通については、バリアフリーの整備が十分に進んでいるとは言い難い。そうした対策がいまだ発展途上にあることは、駅や道端でしばしば立ち往生している高齢者や障害者に出会うことにも現れている。

 

 

 

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