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「造形表現」理論・実践編

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かく活動の発達段階

リードやローウェンフェルドの研究は分類が大まかなので、ここでは日本の子どもたちの作品をもとに、半年ごとに特徴を調べてみよう。乳幼児の作品は、全く自由にしておいた場合と保育園などで経験を積み重ねた場合ではかなりの差がでる。ここに紹介するのは、保育園の子どもたちの作品で、外国の研究より移行が少し早い。

 

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1歳以前は,乳児のそばに画用紙とマーカーを用意しておいても口に入れていたが、口の中に入れなくなると、マーカーを手にして画用紙の上になぐり描きを始める。普通1歳前後とみてよい。これは自然発生的なものだが、マーカーを持たせて手をそえてやると自分でなぐり描きを楽しむようになる。道具を使って運動やリズムを表出しているようである。線は偶発的で左右の動きが多いが、画面にできる線を楽しんでいる。ア]

 

ア] 1歳前後

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なぐり描きをするとき、ジロジロといった言葉を発する子もいるので、なぐり描きの根源は文字ではとも思えるが、左右の水平的な線に上下の垂直な線が加わり、やがてうず巻き形の円運動となる。この段階ではこれが文字か単なる円運動なのかが不明であるが、画用紙の空間に円運動をする姿には積極的な生きざまが感じられる。こうしたなぐり描きを何回も繰り返す中で、自己対話を行い、運動のコントロール能力を身につけていく。イ]

 

イ] 1歳半前後

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これまでこれといった意味のないなぐり描きで、自己表出をしていたが、この頃になると、円形のなぐり描きの中に大小の終結した線の円が表れる。その幾つかを指さして、「これパパ」「これりんご」などと説明を加える子もでてくる。なぐり描きは、相手へのメッセージかもしれない。頭の中で表象したことを認知的に結びつける能力の発達がうかがえるが、まだ形にはならず、円形のなぐり描きも続いている。ウ]

 

ウ] 2歳前後

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