12. 試験結果等に対する考察
12.1 イミュニティ試験のまとめ
今年度の調査は、
・伝導無線周波数妨害イミュニティ試験
・電源短期変動に対するイミュニティ試験
・電源故障イミュニティ試験
・サージ イミュニティ試験
を行った。これらの個別の試験結果は本報告書の第10章で詳しく述べられている。
昨年度、放射無線周波数妨害イミュニティ試験および電磁放射レベルの測定と対策を行ったが、基準内におさまらなかった供試品についてシールドの強化とEMIフィルタの変更で対策を試みた。
今回、新たな追加対策として供試品(スピードコントローラ)を鉄製の箱に入れた。その結果、空間伝導による影響を大幅に改善できた。特にハモーニカ端子と呼ばれる端子は信号の入出力や電源の接続が簡便にできることから広く普及している端子である。しかし、この種類の端子盤を使う場合には匡体の開口部分が大きくなり、また信号線等のシールド性能が劣る欠点が有るので、シールド性能の確保とグランド(接地)の取り方を強化する対策が重要である。
今年度に一部追加試験として行われた導電性布シートによるシールド方法は、供試品を隙間なく覆うことができるので対策の効果が大きい。しかし、通風による熱放散がなくなるので内部の温度上昇が問題となる。
その温度上昇対策としては、EMC対策用に考慮されている金属性の網を使用して換気を図ることが必要である。
電磁放射レベルにおいては、伝導経路が空間伝導か入出力線等かを判別することが肝要である。装置本体からの空間伝導ならば電磁波のシールド効果の有る鉄製の匡体に納めることで良い結果が得られた。
入出力線を伝わってくるものはEMIフィルタで抑制すると良い結果が得られた。また、原因が不明の時や信号線等に個別に対策が可能なものは、1本ずつ対策を講じながら効果を調べる方法も良い。
今年度の主たる試験の一つである伝導無線周波数妨害イミュニティ試験において得られた知見を次に述べる。EMIフィルタで抑制する場合も妨害周波数と使用するEMIフィルタの性能を合致させることが重要である。適切な周波数特性のフィルタを入れることで効果が期待できる。空間伝導の場合に適切な匡体に納めることは効果が有るが、さらに効果を高めるには蓋と匡体との接触状態を良好にし、さらに銅箔テープなどで目張りすると効果が大きい。ただ接触しているだけの隙間があると、偏波面によっては影響があらわれる。従って、電気的な接触を強化し、シールド性能の強化を図ることが重要である。