14. しかし心傷を残すような「重大事件」の結果、心的外傷後ストレス傷害(PTSD = Post Traumatic Stress Disorder)という深刻な症状が現れる場合もある。PTSDに陥る危険は、1)心の準備、2)現場でのケア、3)事件後のデフュージング(ストレス緩和の心理的応急手当て)やデブリーフィング(災害体験を整理し受容するグループ・ミーティング)、によってかなり減らすことができる。
15. PTSDとの診断は、以下を含むさまざまな要素にもとづき、精神科医か心理学者が判断をする。
i. 侵入的再体験(フラッシュバック)
ii. 悪夢と睡眠障害
iii. 出来事の反復的回想
iv. 無関心
v. 事件を思い出させるような人物や状況の回避
vi. 超覚醒状態
vii. 不安、抑うつ状態、悲嘆、怒り
viii. 自殺志向
ix. 反応の悪化
x. 明らかな性格の変化
xi. 引きこもり
xii. 事件についてずっと考え込む
xiii. 絶えず新たな災害が起きると考える傾向
xiv. 睡眠障害の長期化
xv. 全くの無反応
xvi. 恐怖症の形成
xvii. 3〜4週間継続する反応
◆ストレス対処法
有害ストレスの予防と最小化
16.
自分の面倒が見られない者に、他人の世話はできないことを自覚する。
17. 心身共に十分に準備することが、有害ストレスに陥る機会を減らす重要な方法である。この準備には、ストレスとその対処法を理解するだけでなく、事前に現地の生活条件、生じうる問題、言語や文化を学習しておくことも含まれる。特定の状況下で仕事ができるよう、身心ともに良い状態を維持することが重要だ。
18. 緊急事態中のストレス過多を予防するには、まず自分の限界を知る。次に、以下の対策が考えられる。
i. 十分な睡眠をとる。
ii. 規則正しく食事をとる。
iii. アルコール、タバコ、薬の摂取を抑える。
iv. 休息をとり、くつろぐ時間をとる。
v. 運動する。運動は緊張を和らげ、スタミナと健康の維持に役立つ(毎日20分以上何らかの運動をする)。深呼吸や筋肉の緊張をほぐす運動もストレス解消に役立つ。
vi. ストレスを表現する。感情を言葉にする。信頼して話ができる同僚を見つける。
vii. 日記を付ける。会話ほど効果的でないかもしれないが役には立つ。
感情表現は、有効なストレス軽減法であることが分かっている。
19. 他のストレス軽減法は以下の通り。
i. 内面的対処――
心身ともに脅威を感じる環境で困難な仕事をする時、心の中での対話が否定的で自己批判的だとストレスを増加させかねない。引き続き任務に集中するには「こういうのは苦手だ。私のやることは、ことごとく事態を悪化させている」といったマイナス思考は助けにはならない。困難な状況の時は、「いま、この怒っているこの人と接する気になれない。でも前にも出来たのだから今回も大丈夫」といった、前向きな励ましの言葉を自分にかける。