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身体症状

i. 胃腸――

口内乾燥、吐き気、嘔吐、腹部膨満感、胸やけ、腹痛、食欲の変化、下痢、便秘。

ii. 心臓血管――

高血圧、急心拍、紅潮、手足の冷え、発汗。

iii. 呼吸障害――

息切れ、動悸、呼吸困難感。

iv. 筋骨格――

けいれん、背中の痛み、震え、神経性チック、顔面のゆがみ。

v. 神経――

頭痛

 

心的症状

i. 情緒――

不安、苦悶。

ii. 行動――

睡眠障害、タバコ・アルコール・薬物の乱用、性欲の変化。

iii. 知能――

集中力低下、記憶障害、論理的思考力の低下、言語障害。

 

8. 上記の症状が複合して現れたら、対処能力が低下し、職務の遂行に影響が出ることを意味する。ただし、一定の状況下で個人が示すストレスの兆候や程度は、ストレスの程度や過去の情緒的経験、各人の性格によって異なる。

 

9.

蓄積性ストレスの繰り返し起こる原因や、その結果として出る症状は、すぐに対処しないと極度の疲労がたまってしまい、最終的には「燃え尽きて」しまう。「燃え尽き」の症状が見られたら、休息をとってカウンセリングを受ける必要がある。

 

心的外傷性ストレス

10. 心的外傷性ストレスは、個人の対処能力を圧倒する、情緒的に強烈な予期せぬ出来事(心傷を残すような「重大事件〈critical incidents〉」)によってもたされる。「重大事件」は大規模災害や緊急事態のなかでも起こる可能性があり、例としては以下のようなものがある。1)同僚の死傷。2)人質事件。3)子どもの死亡。4)極めて危険な状況の経験。5)暴力を目撃しても無力だった経験。6)激しいメディア取材の対象となった悲惨な出来事にかかわった時、特に報道が不正確であった場合。

 

11. 職員は、「重大事件」の起きている最中すぐに反応をみせたり、重大事件の数分後、あるいは数時間後、数日後に遅れて反応をみせる場合がある。ごく稀なケースだが、数カ月あるいは数年後にストレス反応が出る場合もある。

 

12. 心傷を残すような「重大事件」への反応は、蓄積性ストレスの症状と似ているが、より強烈になる場合があり、吐き気を感じるだけでなく実際に嘔吐してしまったりする。以下に、心傷を残すような重大事件に対する精神的な克服メカニズムを挙げる。感情の麻痺、時間の感覚の変化(目の前で閃光が走ったような感覚を伴う)、高い集中力または視野狭窄症、超覚醒状態。これらの初期反応は「重大事件」後には以下の症状に変わる可能性がある。前記の身体症状のほか、活動亢進状態、大げさなユーモア、攻撃的態度、引きこもり、恐怖、不安、悲しみ、悲嘆、記憶障害、集中力低下、思考力低下、知覚麻痺。

 

13.

これらの症状は、著しい異常事態に遭遇した時の正常な反応であり、多くの場合自然に消滅する点を強調しておく。

 

 

 

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