◆はじめに
1. ストレス(stress)は人間の特性のひとつで、自分を守ると同時に傷つけもする。残念ながら「ストレス」というと否定的に取られる場合が多いが、実際にはストレスのおかげで変化に適応できるようになる。防御性のストレスは自然な反応であり、脅威を感じると、人の体は常に一般的な適応メカニズムによって反応する。ストレス状態に置かれると生じる身体症状によって、人は脅威から「逃げる」か「闘う」ことができる。この反応は基本的な生命保護メカニズムで、心身の防御と準備をする力を高める。注意力を高め、適切な行動が取れるようにエネルギーと資源を結集する。従って人は、ストレスのおかげで状況の変化や困難に直面しても生産的でいられる。ストレス反応は、人の性格、仕事の経験、心身の健全性によって異なる。
緊急事態では、ストレス反応が起きるのは当たり前である。
2. しかしストレスを伴う状況が過度または極めて強烈だったり、一定期間以上続くと、ストレスは人間の性格、健康、遂行能力にマイナスの影響を与え始める。
3. ストレスは莫大なエネルギーを奪う。ストレス状況に置かれると、人間は心身ともに消耗してしまう。しかしいったん危機的環境から抜け出して休息時間を与えられると、人は正常な感情の安定を取り戻す。
4. ストレスの多い状況に対する正常な反応を理解し、対処法を知れば、症状の早期発見によって回復を早め、問題の長期化を防げる。
◆ストレス症状の発見
5. 緊急事態職員はさまざまなストレスに見舞われるが、必要なのは「理想的な」レベルのストレスをもつことだ。ストレスが少なすぎると退屈、刺激不足、疲労感を引き起こし、多すぎると心身ともに圧倒されてしまう。有害なストレスには、蓄積性ストレスや心的外傷性ストレスがある。
蓄積性ストレス
6. 蓄積性(または慢性)ストレスは、1)大きく多岐にわたる要求、2)長時間労働、3)日々のフラストレーション、4)緊急事態における困難な生活と仕事、の結果として、ゆっくりと蓄積されていく。徐々に、いつのまにかたまっていくので本人も気づかないことが多いが、通常、身近にいる同僚には分かる。ストレス状況から解放され、休息を取ってくつろげるようになると、一般に症状は急速に回復し、自分でも違いが分かるようになる。
緊急事態活動に携わっていて激しいストレス状態に置かれている人は、自分の対処能力をうまく判断できない。
緊急事態の間、チーム・リーダーは各職員の反応に特に注意する必要がある。
7. ストレス症状は身体に出ることもあれば、精神面に出る場合もある。食習慣の変化、衛生観念の低下、引きこもり、長い沈黙など、通常の行動パターンに変化があるかもしれない。蓄積性ストレスの症状は、日常生活のあらゆる場面に出る可能性がある。以下に、最もよく見られる症状の一部を示す。