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59. 通関手続き――一般に、帰還事業において通関手続きは省略あるいは簡略化されるが、事前に十分確認すること。帰還民が車両や家畜などの持ち込みを希望する場合は、特別な手配が必要になる場合もある。

 

60. 検疫手続き――通常の旅行者より厳しい健康上の要件(予防接種証明書など)を課すべきではない。予防接種をしないと健康上特に危険な可能性があるという理由から、コレラや腸チフスなどの予防接種を求められる場合もある。その場合はWHO(世界保健機関)の助言を求めること。接種が必要だが、難民が個人用の予防接種カードを所持していない場合は、(難民の持つ)登録用紙に記録する。

 

◆出身国への到着後

 

61. 安全かつ尊厳ある帰還の原則は、帰還の旅を終えた後も、出身国の情勢が安定し、再び出身国の保護が得られ、帰還民がコミュニティにとけ込むまで適用され、モニタリングの対象となる。

 

到着時の登録

62. 状況によっては――特に緊急の帰還では――庇護国で全く帰還登録が行なわれないことがある。その場合、帰還民の登録システムを確立し、UNHCRが各帰還地域の全帰還民にアクセスできるようにする。帰還民カードの発行が適切な場合もある。

 

モニタリングとUNHCRのプレゼンス

63. 帰還民のモニタリングには、UNHCRのプレゼンスが不可欠である。他の適当な機関のプレゼンスや、UNHCRと他機関との連係も重要となる。モニタリングの目的は、国の保護が実質的に回復し、帰還民全員に及んでいるかどうかの把握・評価である。無差別――帰還民が住民と同じ扱いを受け、いかなる攻撃も差別も受けないこと――が基本原則である。無作為の個人モニタリングのほか、全般的な状況(人権侵害、治安、食糧の確保、基本的な施設と財産へのアクセス、移動の自由、保証事項の尊重)もモニタリングする。

 

住民による受け入れ

64. 帰還が自然発生的に起きた場合、しばしば出身国が準備をする時間がない。地元住民が帰還民を受け入れるようできるだけ早く措置を取り、受け入れと、必要なら定着の促進を図る。

 

物的援助

65. 物的援助(material assistance)と保護は関連し合っており、互いに強化し合うのが普通である。帰還民への物的援助はモニタリングをしやすくするし、帰還を恒久的な解決策にする上でも重要である。コミュニティ全体に対し差別なく援助すれば、帰還民の受け入れ・定着も後押しできる。出身国における援助計画の性格と程度、およびUNHCRがいつまで出身国で活動するかなどの詳細は、章末の参考文献を参照。

 

土地や財産へのアクセス

66. 財産は帰還民にとって重要な資源である。この問題は、寝泊まりする場所、自宅への帰還、生計の手段などにかかわり、解決するのは非常に難しいが、帰還を成功させ、永続させるには避けて通れない。帰還民の正当な権利を守るためUNHCRは当局と交渉するなどの役割を果たせる。

 

地雷

(地雷に対する安全対策は第23章を参照)

 

67. 主な帰還ルートや帰還民の居住地域に敷設された地雷(landmines)は、帰還民にとって極めて危険であるので、UNHCRにとっても保護上の重大な懸念事項となる。

 

 

 

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