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自然発生的な帰還への準備態勢

35. 自然発生的な自力での帰還に備えて、以下の積極策を取る。

i. 対象難民について特に、1)出身地、2)経歴、3)構成、4)避難理由、5)出身国の情勢に対する見解、に関する十分な情報を得る。

ii. 出身国のUNHCR事務所と密接な連絡を取り、国内避難民が帰還していないか、あるいは帰還につながるような動きがないかを判断する。こうした帰還の動きは、帰還しないと所有地や財産、仕事を失うかもしれないといった不安がきっかけとなって起きる場合が多い。

iii. 難民の間で共通の心配事を十分に把握する。

 

36. 自然発生的な帰還の兆しがあったら、不測事態計画を立て、出身国・帰還途上での保護と物的援助のニーズを把握し、帰還地域にモニタリング機能を確立(UNHCRや事業協力機関のプレゼンスなど)する。

 

三者間合意

37. 可能な限り、庇護国政府、出身国政府、UNHCRの間で、自主帰還に関する正式な三者間合意を結ぶ。自主帰還が予測される場合は、どのような場合でもできるだけ速やかに三者委員会を作ること。ただし、UNHCRにとって重要なのは、難民と十分な協議の後に帰還に関する三者合意を結び、難民が持つ懸念を常に最優先させることである。

 

38. 帰還合意を練る上でUNHCRの役割は以下の通り。

i. 合意書がすでに述べた基本的な保護上の考慮事項に配慮した内容になるよう、両国政府と協力する。

ii. 合意が実施されるために、必要な場合は物的な援助を行なう。

iii. 帰還民に保護、および自由かつ妨害のないアクセスが与えられているかに注意して、帰還計画をモニタリングする。また、出身国に駐在し帰還民の再定着をモニタリングする。

 

39. 正式な合意書の実際の内容と範囲は、状況によって異なる。合意書のサンプルはVoluntary Repatriation: International Protection の付表5を参照。

 

40. 帰還希望者が、出身国と主張する国の国民かという疑問が生じる場合がある。その決定責任は出身国政府にあるが、国籍の主張や無国籍に関する問題で、現場レベルでは解決できない特殊な問題点が生じた場合は、本部に対応方法を相談する。

 

調整

41. 帰還事業には複数の国が関与し、UNHCRが調整実務を担当する場合が多い。

 

42. 事業の成否は、庇護国・出身国のUNHCR事務所間の連絡・調整に左右される。

国境越しの調整作業は、「自主帰還事業は出身国の状況・受け入れ能力・準備態勢に基づいて決める」という原則に沿って行なう。

 

43. 一人のUNHCR職員を、庇護国・出身国における帰還事業と実際の移動の総合責任者に任命する(出身国のUNHCR現地事務所代表など)。複数の庇護国から大規模な帰還がある場合は、調整官を置く必要性が一段と高まる。本部に担当官(focal point officer)を置くことも同様に重要である。

 

職員

44. UNHCRは難民保護に責任があり、こうした事業ではしばしば多数のフィールド職員が必要となる。UNHCR職員は以下の仕事をする。

 

 

 

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