一括恩赦でない限り、帰還民は帰国するまで保護されるか分からず、それでは遅すぎる場合もある。完全な一括恩赦が無理であれば、恩赦の適用期間(特定日の以前か以後、または特定期間内に起きた犯罪行為に対する恩赦の適用)を定める。
モニタリング
27. UNHCRは、帰還民の安全と再定着の状況をモニタリングするために、帰還民への直接かつ妨害のないアクセスが必要である。刑務所や拘禁所へのアクセスも同様である(この点では赤十字国際委員会や人権委員会との連絡、さらに帰還民を援助するその他のNGOとの情報共有が重要となる)。
28. 国家の保護(protection)が不十分なために帰還民が危険な状態にある場合、UNHCRは適宜、帰還民のために介入し(救済処置を講じたり、地元・国・複数の国々に対して公式に抗議するなど)、十分な報告がなされるようにする。不安定な状態が続く場合は、帰還の方針を見直す必要がある。
29. 帰還民のモニタリングだけでは、出身国における帰還民の安全と国際的に認められている基本的な人権(human rights)を確保する仕組みは成り立たない。UNHCRのモニタリングは、恩赦・保証・法の支配・人権などをより尊重させる効果はあるかもしれないが、決して国の責任にとって代わるものではない。
残留した難民に対する庇護の継続
30. どんな自主帰還計画も、難民の継続的な庇護、および庇護国残留を選んだ人々の国際的保護を確保する措置によって補完されなければならない。難民のなかには、迫害を受ける恐れがあるという十分に理由のある恐怖を抱き、帰還を希望しない者がいる。最初に帰還した人たちがどうなるかを見極めるため、当初は帰還しないと決断したり、決定を先延ばしにする者もいる。
31. これは減少した対象者のために、既存の難民援助事業を続けることを意味する。帰還計画の終了後も庇護国にとどまっている難民や、何らかの理由で出身国に帰れない難民にとって、望ましい選択肢は庇護国定住だ。しかし残留難民向けに、第三国定住プロジェクトが必要な場合も稀にある。
32. 帰還の強要または脅迫が深刻な場合は、難民が残留を決断した直後、すぐに他の場所に移動させる必要な場合がある。この移動の必要も予期し、自主帰還の合意書に盛り込む必要がある。
保護に関する他の考慮事項
弱者層
33. 事業の全段階を通じて、弱者層――保護者のいない子ども、身寄りのない老人、障害者、病人など――に対し特に注意する。単身女性や片親世帯の特別なニーズに対しても同様である。自然発生的な大規模帰還では、途中で家族が離ればなれになってしまう場合があるので、家族再会のために追跡サービスを確立する必要がある。登録の際は、弱者層(なかでも特別なニーズのある人々)の身元や、庇護国または出身国にいる弱者層と密接な関係にある人々の身元を記録する。
◆帰還の準備
34. 緊急の場合を含め、どのような帰還でも以下の措置を検討する。第1〜9章で述べてきた管理運営の原則(計画立案、ニーズ評価、実施など)と共に、第18章も参照すること。