日本財団 図書館


8. UNHCRが客観的に見て、ほとんどの難民が安全に帰還できると思えない場合でも、難民に強い帰還の意思があったり、すでに独自に帰還を始めている場合は、帰還を奨励しないよう注意しながら、帰還の便宜を何らかの方法で図ることもある。

こうした帰還支援は、難民の自由意思による帰還の決断を尊重した結果であって、十分な安全性を示唆してはいない点を、UNHCRは当局と難民に対し明確に示さねばならない。

 

9. 帰還の手助けをする際、その内容は状況によるが、以下が含まれる。1)難民への情報の提供。 2)帰還中・帰還後にUNHCRができる保護と物的援助の限界を知らせる。 3)恩赦の交渉。 4)出身国におけるプレゼンス(事務所の設置、駐在)の確立。 5)難民の待遇のモニタリング。物的援助が、帰還の誘引材料となったり、UNHCRによる帰還の促進であると解釈されないよう慎重に行なう必要がある。

 

10. 客観的に見て、難民の大半が安全に帰還できると思えないのに大規模な、自力での帰還が起きている場合や、緊急の場合、UNHCRの果たすべき役割について本部に助言を求める。

 

◆自主帰還の条件

 

11. 自主帰還に必要な条件――

◆ 帰還に対する自主性の保護

◆ 帰還後の待遇の保証

◆ 残留した難民に対する庇護の継続

 

帰還の自主性

12. 以下の要素を保証されるようにし帰国の自主性を確保する。

i. 帰還の決断は自由意思に基づく。

ii. 難民は、出身国の状況に関する正しい情報に基づき決断する。

iii. (難民による帰還の決断は)明白に表明される。

 

13. 自主性は、出身国の情勢と、庇護国(country of asylum)の情勢(自由な選択が認められているか)の両方に基づき検討しなければならない。

自主性とは、難民への帰還の圧力が一切無いことを意味する。

 

14. (自主性を判断する際)現地事務所は、出身国と庇護国両方の情勢に関して分析する。出身国の情勢に関する分析の多くは、女性を含む難民コミュニティ各層からの聞き取り調査に基づく。自国の情勢変化と庇護国の情勢に対する難民の態度を考慮に入れる。

 

15. 自主性とは、難民が帰還を妨げられないことも意味する。庇護国の経済的・政治的目的のために、利益団体が帰還を阻止しようとする場合がある。

 

16. 帰還の性質がどうであれ、帰還の自主性を保証するため、難民には常に出身国の情勢を十分に知らせる。難民がすでに十分な情報を得ている場合も多いが、しばしば追加情報が必要である。

 

17. 帰還民の受け入れ予定と、出身国における生活への再定着の見通しについて、難民に情報を提供する。難民は、自分の土地・家屋を取り戻す権利があるのか、最初はどのような物的援助をどれだけ得られるのか、何を持ち込めるかなどを知りたがる。

 

18. こうした質問の多くは、以下のような方法によって答えられるだろう。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION