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◆はじめに

 

1. 自主帰還事業は「特別な対応と例外的な措置」を必要とし、短期間で組織化しなければならないという点で、しばしば緊急事態事業の特徴を多く備えている。本章では、特に緊急事態状況における自主帰還の手引きを簡単に示すが、詳細はVoluntary Repatriation: International Protection, UNHCR, 1996を必ず参照すること。

 

2. 自主帰還は、難民の窮状の望ましい解決策である。UNHCR事務所規程の第1条において、同規程の適用範囲に該当する難民の「自主帰還を促進するために政府及び、関係国政府による認可を条件として、民間団体を援助する」ことが高等弁務官に要求されている。

 

3. 通常、自主帰還には以下のどちらかの特徴がある。

i. 「組織的な帰還」――UNHCRの支援のもと、組織化された形で難民が帰還する。

ii. 「自然発生的な帰還」――組織化された事業としてでなく、難民が自らの方法で帰還する。

 

4. 自然発生的な自力での帰還は、予期せず生じ、時には紛争状態のなかでも起こる。UNHCRは難民が帰還する途中、そして帰国してからも、必要な時に効果的な保護・援助が与えられるよう態勢を整えておく必要がある。また、出身国の状況についても難民に情報を提供する(地雷、帰還ルート、国境情勢などについて)。

自然発生的な大規模帰還において、特別な対応と例外的な措置が必要とされる可能性が最も高い。

 

◆自主帰還におけるUNHCRの役割

 

5. 自主帰還におけるUNHCRの役割には、以下が含まれる。

i. 難民の帰還が自主的であるかどうか確認する。

ii. 安全かつ尊厳ある自主帰還につながる条件の整備を進める。

ii. 帰還できる条件が整ったら、難民の自主帰還を奨励する。

iii. 帰還の条件が整っていなくても、難民の自主帰還が自然に発生している場合は、帰還のための便宜を図る。

iv. 帰還民の利益と福利を守る上で、必要な場合は、NGO(非政府組織)その他の機関と協力して帰還民の輸送・受け入れを準備する。

v. 出身国での帰還民の地位、および政府による保証が守られているかをモニタリングする。必要な場合は難民に代わって交渉する。

 

6. UNHCRは、出身国の情勢について客観的、かつ最新の情報を把握する。現場の職員は、難民たちの自主帰還に対する意思をよく知るようにし、難民と関係政府に情報を提供する。

 

7. 自主帰還を「奨励すること」と「便宜を図ること」を区別する。客観的にみて、難民が安全かつ尊厳1をもって帰還でき、帰還(後の定住)が永続する十分な見通しがある場合のみ、帰還の奨励がなされる。また、UNHCRは自らが帰還に関する全ての面の手順を整えない場合でも、自主帰還を奨励することもある。UNHCRの支援の有無に関わらず、難民が自分たちで帰還の手配をする場合は多い。

 

1 「安全」とは、法的安全、身体的安全、物的安全、または土地や生計手段へのアクセスを意味する。「尊厳」には、あらゆる権利の回復をはじめ、難民が国家当局から敬意ある待遇を受けるという概念が含まれる。

 

 

 

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