◆はじめに
1. 初期の計画立案で、サプライ・チェーン(供給網、supply chain)の果たす重要な役割を見落としてはならない。状況把握のための派遣団にはロジスティクス(logistics)の専門家を加える必要がある。難民の所在地が辺ぴな場所であるほどロジスティクスの確立は難しくなるが、こうした状況でこそ後方支援の有無が事業の成否を左右する。
有効な緊急事態事業では、適切な供給物資を、適切な時に、適切な場所へ、適切な量だけ供給する能力が不可欠である。
2. サプライ・チェーンは、1)国際調達、2)輸送、3)到着後の迅速な荷下ろしと免税通関、4)現地調達、5)一時保管、6)現地への輸送、7)最終的な配給、などの各段階で適切な在庫管理が必要となる。図1に、サプライ・チェーンに含まれる主な構成要素を示した。
3. 予測不可能な出来事や通関の遅れ、故障、略奪、自然現象など、UNHCRの力の及ぶ範囲の外にある多くの要因によって、後方支援が絶たれる場合がある。援助対象者の数も、まだ事業が緊急事態にある段階ではしばしば膨れ上がる。
利用可能な対応力がすぐに限界に達してしまう可能性があるので、サプライ・チェーンは余力をもたせる必要がある。
◆サプライ・チェーンの組織化
◆ 事業を調整・統一し、サプライ・チェーンが重複しないようにする。
◆ そのためには全体のニーズと、これを満たす責務の明確な理解が必要だ。
◆ 優れたサプライ・チェーンには、迅速性・柔軟性・安全性という三大要因がある。
事前調査
4. 当事者全員が全体のニーズを明確に理解していることが不可欠だ。ニーズの把握と計画立案は、政府、そしてWFP(世界食糧計画)、NGO(非政府組織)の実施パートナーと協力して実施する。
5. 基本的な物資ニーズを満たすには、まず分かりやすく、包括的な必要物資のリストを作る。これがないと大きな混乱が生じるうる。最初にこうしたリストがあると、ニーズ・必要物資・配給のバランスを継続的にモニタリングでき、救援物資やサービスの効果がすぐに分かる。
計画立案
6. 優れたサプライ・チェーンには、迅速性・柔軟性・安全性という三大要因が必要であり、これは優れた計画立案・調整・連絡によって決まる。サプライ・チェーンを計画・展開する時は、以下に留意する。
i. 迅速性――緊急事態では対応時間が極めて重要である。資源を最大限に利用し、回避できるはずの間違いや非能率的な部分を是正し、時間を浪費しないように事前に計画立案する。その際、計画から実施までにかかる時間を考慮する。
ii. 柔軟性――ロジスティクスは、事業と地域事情に強い影響を受けるので、状況の急激な変化に迅速に対応する必要がある。最悪の事態に備えた計画を立て、必要な柔軟性と適応性をもたせる。
iii. 安全性――ロジスティクスの計画では、職員と救援物資の安全を優先しなければならない。盗難や略奪、戦争など多くの危険が考えられる。