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23. 家庭用トイレの管理は各家庭が行なうが、どうしても共同トイレを設置する必要がある場合は、それらを清潔に維持するための特別な取り決めが必要となる。保健センターなどコミュニティ施設のトイレは、特に注意してメンテナンスを行ない、清潔さを維持する。難民が適切な指揮・監督のもと作業する必要がある。共同トイレを清潔かつ使用可能な状態に維持する責任を持つ者に対し、金銭などの報酬の支払いが必要となる場合もある。

 

24. 防疫用の殺菌消毒薬の使用は、排泄物の生物分解を防げる。消毒薬を使わなくとも、トイレの溝や槽に定期的に土や灰、油などをまけば、虫の繁殖や悪臭を抑えられる助けとなる場合がある。

消毒薬は、トイレの槽やタンクに直接注ぎ込まないこと。

 

25. 排泄物処理システムの選択には、1)難民の伝統的な衛生習慣、2)その地域の特性(地質、水利、降雨、排水など)というふたつの要素が主に影響する。これらの要素へ配慮が不十分だと、システム自体が健康に害を与えかねない。

 

26. まず、難民の伝統的な衛生習慣を知り、それをどのように修正すれば難民緊急事態の健康リスクを減らせるか考える。そのためには以下の情報が必要となる。

 

□ 従来の衛生システムと習慣。

□ 排便後の肛門の洗い方・拭き方。

□ 排泄時の姿勢(座るかしゃがむか)。

□ プライバシーの必要性。

□ 性別、その他トイレの共同使用を文化的に受け入れられない集団や個人の分離・区別。

□ 子どものトイレ利用についての文化的習慣。

□ 文化的タブー(他人の排泄物に触れた可能性があるものとの接触拒否など)。

□ 社会的要因。コミュニティがその構成員にシステムを適切に利用させる可能性など。

□ 一部の文化における、トイレの方向(方位)を特定する必要性。

□ 難民の居住地域周辺で使用されている方法。

 

27. すべてのトイレまたはその近くで、排便後に肛門を洗う・拭くものを用意しなければならない。これは衛生上欠かせない。

 

トイレは子どもにとって安全で、夜間も使えなくてはならない。

女性の安全に配慮する。共同トイレには何らかの照明をつけ、場合によっては警備を置く必要もある。

 

即時措置

28. 当初、難民は所かまわず排泄して自らの環境や給水を汚染してしまう可能性が高い。コミュニティの指導者と話し合い、境界線を設けて排泄場所を定め、排泄物の広がりを防ぐのが一番有効な措置である。

 

29. 1カ所以上の区域(約50メートル×50メートル)を、住居から離れた風下の位置に、ただし使用に不便を生じない程度の近さに定める。通常は、男女別に区域を指定するのが望ましい。この区域の中央進入路をはさんで、帯状に排泄場所(幅約1.5メートル、長さ約20メートル)を設け、入り口の一番遠くから順に使用する。

 

30. 進入路を除き1日1人あたり0.25平方メートルという推奨される面積を基準にすると、上記の広さの排泄区域は約250人が1カ月間、または500人が2週間使用できる。同じ排泄場所は1カ月以上使用しないほうが良い。

 

 

 

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