◆はじめに
1. 環境衛生には、1)水質の保全、2)人間の排泄物・廃水・ゴミの処理、3)虫・ネズミ類の駆除、4)食糧の安全な取り扱い方法、5)用地の排水、などが含まれる。これら全てのサービスと健康に関する援助の提供とは密接に関連しているため一緒に検討する。特に本章は、水、保健、用地計画の各章と併読する。
2. 混乱状態の中、さほど混雑していない、異なる環境に慣れた人々が、ひしめきあって生活するようになると、適切な衛生管理が特に重要となる。基本的なサービスが存在せず、習慣を変える必要がある場合も多い。こうした状況で、人間その他の排泄物や廃棄物の処分がずさんだと、健康に重大な脅威を引き起こす。
3. 難民キャンプでの衛生計画は、好ましくない環境要因や社会文化的習慣によって実施が難しくなる場合がある。他にも以下の制約がある。
i. 洪水になりやすかったり、土地がやせていたり、僻地である場合。
ii. 土地の不足。
iii. 自然要因または環境保護への配慮から、限られた地元物資しか利用できない。
iv. コミュニティを最低限にすら組織化する時間がない。
v. 適切な能力をもつ人材がいない。
4. 健康に有害な要因を減らすカギは、(衛生面から)許容でき、かつ現実的な廃棄物処理(waste disposal)システムを確立することである。やむをえず伝統的な慣習から逸脱する場合でも、難民と協力して開発し、文化的な適合性をもたせる必要がある。特別な公衆衛生教育が必要な場合もある。
5. 難民は、できるだけ衛生サービスの運営をしなければならない。この場合モニタリングは不可欠である。サービスの有効性は、定期的かつ徹底的なメンテナンスに大きく左右される。
◆基本原則と基準
◆ 用地選びと設計の段階で、衛生面のニーズに十分配慮する。
◆ 初期のニーズ・資源評価の一環として、公衆衛生・環境衛生問題を分析する。
◆ 地元の事情に通じた人から専門的なアドバイスを受ける。
◆ 衛生施設の設計や配置、特にそのメンテナンスに関しては、難民と相談し、彼らを参加させる。
◆ 公衆衛生教育計画の一環として難民を教育し、特に難民児童の学校で衛生問題を取り上げる。
6. 用地計画の章で強調したように、環境衛生は用地設計の際、非常に重要な考慮事項となる。衛生サービスの組織化・運営は、他のコミュニティ・サービスと統合しなければならない。
7. 難民緊急事態で十分な衛生環境を確立するのは難しいが、間違いを正すのはもっと難しい。難民と庇護国国民の習慣に通じていて、できれば難民緊急事態の経験がある公衆衛生技師(public health engineer)に、専門的な助言を求める。まず地元で、政府部局、国連機関、NGO、大学、コンサルタントや業者の助けを求め、これでニーズが満たせなければ本部の支援を求める。
8. 良い衛生環境が保てるかは、そのコミュニティとシステムを運営する人々の姿勢に大きく左右される。開発されたシステムやサービスは、効率よく運営できるようにし、外部の関与を最小限に抑える。難民自身を訓練し、環境衛生計画を運営させる。