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煮沸

92. 煮沸は、いちばん確実な水の殺菌法である。低地の場合、沸騰しただけで、水中の病原菌は死滅すると考えられる。高度が上がると沸点が下がるので海抜が1000メートル上昇するごとに沸騰時間は1分ずつ長くしなければならない。水を長時間、勢いよく沸騰させるようしばしば奨励されるが、便から経口感染する病原菌を殺すのにはその必要はない。燃料の浪費となり、水の硝酸塩濃度も高くなる。硝酸塩を多く含む水は、新生児などには危険だ。長期的には家庭への燃料供給量が決定要因となる。水1リットルを沸騰させるには約1キロの薪が必要である。難民が伝統的に水を煮沸する習慣を持っており、今後もそれを継続できるのなら煮沸を奨励する。少なくとも最初は、煮沸する習慣があることによって他の処理方法を必要とする緊急性が低くなる。

 

◆貯水

 

◆ すべての難民所在地に、できるだけ早く適切な貯水設備を設ける。

◆ 貯水は、キャンプ住民のニーズを満たす水を継続的に確保する唯一の手段である場合がある。

◆ 一般に、貯水槽や貯水池の設計・工事には地元の技術を利用する。ただし、プレハブのタンクを使うことが緊急に水を供給する唯一の手段である場合もある。

◆ 貯水槽のサイズ、立地、設計全般が、給水システムの他の部分や設計条件に合っているかるか確認する。

 

93. ほとんどの給水システムは、水源と配水所の間に覆いのついた貯水槽を設ける必要がある。貯水すると、緊急事態と長期使用のどちらにも欠かせない水の蓄えが確保されるとともに、安全な水の監視、浄水、集配がしやすくなる。

すべての難民所在地に、十分な水が蓄えられる設備をできるだけ早く設ける。

 

94. 使用する貯水槽の大きさは、難民の数と給水システムの特徴によって決まる。

水は、いろいろな場所に貯留できる。

i. 集水所のタンク。

ii. 中央貯水槽(浄水処理の前または後)。需給のバランスを保ち、自然流下方式の配水を可能にする。

iii. 給水所のタンク。公共給水塔、保健センターなどのサービス提供場所や、キャンプ管理運営施設、職員住居など水が供給される場所。

iv. 難民家庭の小型容器。配水所との往復に使う容器とは別の容器にする。

 

95. 必要な貯水方法がどのようなものであっても、適切な囲いを設けて、人間、動物、ホコリなどによる汚染を防ぐ。しっかりと覆いをして暗所で貯水すれば、藻類の成長やボウフラの繁殖も防げる。

 

96. 乾季と雨季がはっきりしている地域では、集水用の貯水池の設置も選択肢のひとつである。ただし汚染と蚊の繁殖の危険をともなう。この場合、浸食防止措置を施した、越流のための余水路を設ける必要がある。また、地表水を集めるタンクの設置も検討に値する。このタンクは地面に穴を掘って作り、豪雨時に固い地表を流れる水を溜めておく。タンクには水漏れを防ぐ特殊な内張りが必要であり、できれば覆いをつける。

 

97. 地下水面が非常に高く汚染を防止できない場合は、地面より高い位置にタンクを設ける必要があるだろう。空輸可能なブチルゴム製簡易貯水タンクには様々な種類があり、配水設備一式のセットもある。地元の資源でこのニーズに対応できない場合は、本部の助言を求める。

 

 

 

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