湧き水の水源を汚染から守ることが不可欠である。
59. 水源の保全は、レンガ、石、またはコンクリートの簡単な構造物を作り、そこから水が配水管を通って貯水槽または集水所に直接流れるようにすれば確保できる。取水地より高地で水が汚染されないようにする注意も必要だ。
水のニーズを湧き水で満たせない場合は、次善策として地下水を汲み上げる。
60. 地下水は、集水用埋設管、掘り抜き井戸、掘り井戸、またはボーリング孔で汲み上げることができる。(集水用埋設管は地下水を水平方向に、トンネルや溝などを通し抜き取る)。どの方法を選ぶかは、地下水面の深さ、湧水量、土壌の状態、それに専門技術や器具を利用できるかどうかによる。
61. 綿密な地下水の調査や、試験ボーリングをしない場合、また、近くの井戸(wells)からその土地の水の状況がはっきり分からない場合は、新たな井戸またはボーリング孔から必要な量と質の水が得られる保証はない。また、費用も高くつく。
大規模なボーリング計画に着手する前に、必ず水文地質調査を行なう。
62. 集水用埋設管、井戸、ボーリング孔から得られる水量は、その場所の地質構造、用地の地形的特徴、施工技術、使用するポンプ設備に左右される。新しい井戸やボーリング孔は、初めのうちに高速で汲み上げ、利水量を最大まで高める必要がある。これによって微細な土壌粒子がはき出され、水が井戸に入りやすくなる。利水量は、井戸内部の地下水面より低い部分を大きくすることで高めることができる。浅い井戸の場合、地下水の流れを横切る形で集水用埋設管を設置する。複数の井戸が近接していると、利水量は減る。
63. 井戸、ボーリング孔、集水用埋設管、ポンプは作業中に汚染された可能性があるため、工事、修理、設置の直後に消毒しなければならない。2.5パーセント塩素水バケツ2〜3杯が適当な消毒剤となるだろう。また、地表水、特に季節的な大雨や洪水が井戸口から流れ込まない場所に設置する。衛生施設、およびその排出場所より高い場所に、さらに最低30メートルは離れた所に設置する。こうした設備の設計・工事では水が汚染されないよう特殊技術を使う。
海水
64. 海水は、飲む以外ならほとんどすべての用途に使えるため、淡水の必要量を減らすことができる。適当な淡水源がなくても、近くに海水があれば、費用はかかるが脱塩するという手がある。二つの基本的な脱塩法(太陽熱を利用した蒸留精製法と近代的な脱塩工場の利用)のいずれも、大規模な難民緊急事態で淡水が急に必要とされる状況に対応できる可能性は低く、不適切である。したがって用地に淡水源が全くない場合は、緊急に難民の移動を検討する必要がある。
公共・民間の給水システム
65. 難民居住地周辺にある既存の公共・民間の給水システム、例えば工業施設や農業用の設備が、緊急事態ニーズの一部または全部を満たせるなら、他の水源の開発という不要な措置を取らずに利用すべきである。取水量を増やしたり水質を改善できる場合もある。