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地表水

小川、河川、池、湖、ダム、貯水池の水が飲用に適している場合は滅多にない。直接使用するには浄水処理が必要となる可能性が高いが、ほとんどの難民緊急事態ではそうした処理の計画・実施は難しい。

 

雨水

52. 汚れていない適当な屋根があれば、ある程度清潔な雨水(rain water)を集められる。これは年間を通じて十分かつ確実な降雨がある地域でのみ主水源になる。しかしそれに適した住居と、各家庭における貯水設備が必要である。従ってほとんどの難民緊急事態では適当な解決策ではない。

できるだけ多くの雨水を集めるために、あらゆる努力をする。

 

53. 各家屋の屋根や雨どいの下に水がめを置くなど、小規模な雨水収集システムを奨励する。長い乾期の後、初めて降った雨水は、ほこりを流すために、溜めずに流し出す。この方法により集水できる水の供給量は、以下のように見積もる。

 

54. 屋根1平方メートルあたりの年間降雨量が1ミリの場合、蒸発分を差し引いて年間0.8リットルの雨水が得られる。したがって屋根の大きさを5メートル×8メートル、年間平均降雨量を750ミリとすると、年間集水量は5×8×750×0.8=2万4000リットル、すなわち1日平均66リットルになる(降雨量ゼロの日も多い)。

 

55. 雨水は、一般的なニーズを補う有効な手段となる。例えば、水の安全性が極めて重要な保健・給食センターなどのコミュニティ・サービス向けに特別な集水ができる。また、地表水は特に雨季に汚染されやすい点にも留意する。従って、他の水が豊富にあっても安全でない場合、雨水は個人向けの安全な水の有益な取水源となる場合がある。

 

地下水

56. 地下水は、帯水層に含まれている。帯水層とは、水を運び、蓄え、湧き出させる岩石または岩石群のことである。帯水層は、ゆるい堆積層(シルト、砂、砂れき)、破砕岩石、もしくは多孔質岩(破砕火山岩、花崗岩、変成岩、砂岩など)で形成されている。地下水は岩石の細孔を透過する際にろ過されるため、通常、微生物学的に見て非常に良質である(ただし、岩石の断口が大きいと十分にろ過されない)。

 

57. 難民緊急事態では、ほとんど例外なく地下水を利用するのが望ましい。地下水は通常、最良の質の水を必要なだけ素早く手に入れることのできる最も費用効果の高い水源である。ただし、長期的なニーズへの対応に使うかどうかは、帯水層と水の涵養(かんよう)、透過、放出に関する全要素と、専門技術や設備の利用可能性を細かく把握・評価してから決める。

湧き水は、地下水の理想的な水源である。

 

58. 通常、湧き水は水源では清潔で、貯水所や配水所まで配水管で送ることができる。できれば難民キャンプより標高の高い土地から引く。湧き水の真の水源を入念に調べること。湧き水のように見えても、実際には、地表水が少し離れた所でしみ出ていたり、流れ込んだにすぎない場合がある。湧き水の量は、季節によって大きく変わる。乾季の終わりから雨季の初めが最も少ない。地元住民の助言を求めること。

 

 

 

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