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供給量が減ると、個人と家庭の衛生状態が悪化し、寄生虫病、真菌症、皮膚病、下痢性疾患の発病率が高くなる。それまで一般に推奨されるより少ない水量で暮らしてきた人々も、難民キャンプにいる時は過密人口と環境要因によって、より多くの水を必要とする。

 

22. 水の入手可能性は、衛生システムを確立する際の決定要因のひとつになる。ピット式トイレに水は要らないが、シャワー、洗い物、洗濯、水洗便所には全て水が必要である。

 

23. 多くの難民状況では、家畜用の水も必要となる。乏しい水資源が家畜によって汚染されたり、枯渇しないよう十分注意する。人間用の給水所と動物用の給水所を必ず分離する。大まかな基準として、牛は1日約30リットルの水を必要とする。難民が食べ物(菜園、作物)を栽培する際も水は必要となる。家畜用・農作物用を含む水の必要量は、UNHCRのWater Manualの別表Bに目安が示されている。

 

24. 難民所在地で大火事が起きても、量と水圧の不足から、水はほとんど消火には使えない。

難民のさらなる流入が予想される場合は、当初予想されたニーズ以上に、かなりの予備貯水量を計画に入れなければいけない。

 

水質

25. 水は、難民が許容できると同時に、飲み水として安全でなければならない。味や色が悪くなければ、難民は微生物が含まれている危険に気づかずに水を飲んでしまう。

通常、水を媒介とする疾患よりも、水で洗えれば予防できる皮膚や目の感染症など、水不足や個人の衛生状態の結果生じる疾患のほうが深刻で伝染しやすい。

従って極めて清潔な水を少量供給するより、ある程度安全な水を大量に供給するほうが望ましい。

 

26. 給水システムの安全性を最も脅かすのは、ふん便による汚染である。いったん水が汚染されると、緊急事態の状況下ですぐに浄化することは難しい。

 

27. 水は、ふん便から経口感染する病原体、特に一部のウイルス、バクテリア、原虫嚢子(のうし)、虫卵を含んでいる可能性がある。人のふん便による汚染は重大な問題だが、動物のふん便が水に混じった場合も病気は広がる。尿による水質汚染は、尿性住血吸虫症(urinary schistosomiasis, Schistosoma haematobium)が風土病となっている土地でのみ大きな脅威となる。

汚染された飲み水によって伝染する危険性が特に大きいのは、下痢、赤痢、伝染性肝炎(A型肝炎)である。

 

28. 下痢と赤痢は、さまざまなウイルス、バクテリア、原虫が原因となる。水中のウイルスと原虫の数は、時間がたてば必ず減るし、高温下では最も急激に減る。バクテリアも同様の反応をするが、例外的な状況下では汚染された水中で増殖する。ウイルスと原虫は通常、微量でも感染力が強いが、バクテリアが腸内感染するためには多くの菌量を要する。

 

29. 新たな供給水は、使用前に細菌学的特性を検査する。既存の供給水については定期検査を行ない、安全でない水が原因と考えられる病気が発生した場合は、ただちに再検査する。

 

30. 飲用水としての適性を調べるには、水の化学的・物理的・細菌学的な特性を分析する。

 

 

 

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