外部のヘルスワーカーは、健康や病気に対する難民の考え方を理解しなければならない。保健サービスは、最初から難民のためというより、難民とともに開発・運営する。そうしないと効果は上がらず、サービスへの信頼が失われ、ほとんど利用されず継続の見込みもない。
90. 予防サービスは常に無料にする。さらにほとんどの場合、他の保健サービスも無料で提供される。他の保健サービスの無料提供を正当化することはできるだろう。だが、この方法がとられるのはしばしば温情主義的な考えによる場合が多く、無料提供を方針にすべきではない。費用回収やサービス代金の支払いの問題は定期的に検討する。特に難民が地元住民のなかに溶け込んでいたり(地元住民との不公平が起こりうる)、難民が地元に溶け込むことにより恩恵を受けていたり収入源をもつ場合は注意が必要となる。
職員配置の必要性
91. 以下は、保健職員を選ぶ際の、一般原則としての優先順位である。政府当局と協議しながら決める。
i. 難民
ii. 経験を持った受け入れ国の国民または住民
iii. 外部者
ほとんどの緊急事態では、これらの組み合わせが必要になる。
92. 保健職員に選んだ難民については、医療技術、特にコミュニティにおける従来の役割のなかでの教育訓練、監督、向上に重点を置く。難民を選ぶ際は女性を含めるように配慮する。彼女らは男性のように自分から進んで名乗り出ないかもしれない。伝統的な治療師や助産婦としての経験も十分考慮する。難民は伝統的治療法を求めるかもしれない。伝統的手法による保健管理は、組織化された他の保健サービスを補うという利点があることが経験上分かっている。
93. 医療活動をするための認定資格や許可など、外国人の医療従事者に対する庇護国政府の態度は重要な考慮事項である。
94. 職員の給料や報奨金・物は最初に決めておき、難民計画に関わるすべての機関・組織が同一基準を守る。これは国(または出身国)の水準をもとに決め、難民が受ける援助(無料の食糧、水、住居など)も考慮する。原則として、任務が明確で、勤務時間が定められた仕事に毎日従事する職員に対してはすべて、給料または報奨金・物を与える。
95. 地元の職員を採用する場合は、特別な注意が必要となる。彼らに対する給料や報奨金・物は、庇護国の基準に従う。難民緊急事態が起きると庇護国の人材が援助事業に携わりたがり――よく「頭脳流出」といわれる――その結果、国のサービスに支障をきたし、しばしば深刻な緊張が生じる。
国の保健当局
96. 庇護国の中央、地方、地域当局の保健サービスが早期に関与することが不可欠となる。難民に提供するサービスは、できるだけ国のサービスと統合する。一部の処置規則、予防接種計画、伝染病予防対策、監視手順などとの統合・一致は特に重要である。難民の健康推進は地元住民のためになるのは明らかだ。しかも既存の組織を支援すれば、難民への保健サービスが継続的となり、また、庇護国の国民の受けるサービスと同じ水準になる。
UNHCR保健調整官
97. 大規模な緊急事態(伝染病が流行していたり、多くの実施協力機関や関係者が参加している場合)では、UNHCRは難民保健調整官を必ず任命する。