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74. 難民は、適切な治療を容易に受けられなければならない。ニーズに応じて地元の国立保健施設を強化できない場合は、代替措置が必要となる。適切なレベル(→第73節)で治療を受けられなければ、病院や保健センターは、軽い症状の治療を求める難民であふれてしまう。したがってコミュニティにおける保健サービスでは、治療が必要な人を見つけ、患者が適切なレベルで処置を受けられるようにする必要がある。コミュニティ・サービスとの緊密な調整が不可欠である。

 

コミュニティ・レベルの保健管理

75. 難民が、キャンプあるいは地元の村、どちらで生活している場合も、コミュニティ・レベルのサービスは不可欠である。

コミュニティ・レベルの保健管理は、緊急事態の初めから保健サービスの柱としなければならない。

 

76. 基本的な保健管理は、1)末端の診療所/ヘルスポスト、2)コミュニティ・ヘルスワーカーと伝統的出産介添人(traditional birth attendant = TBA、産婆)による訪問活動からなる。産婆には、コミュニティの助産婦から採用される場合もある。効果を上げるためには、コミュニティ・ヘルスワーカーと産婆の教育訓練、支援、厳しい監督が必要だ。コミュニティ・ヘルスワーカーと産婆の役割は以下の通り。

i. 家庭訪問。病人や栄養失調の子どもの発見と紹介。

ii. 妊婦の発見と、妊娠期間中、出産、出産後のケアの紹介。

iii. 基本的な保健教育。

iv. 健康情報システムのデータ収集(死亡、死亡原因、主な伝染病の発病率)。

v. 性的暴行を受けた難民への対応。

 

目安として、人口1000人あたり1人のコミュニティ・ヘルスワーカー、人口3000人あたり1人の産婆の配置をめざす。同性がケアするほうが望ましいため、訓練対象者の半数を女性とすべきである。

 

77. 診療所やヘルスポストは、過密状況で暮らしているものの、健康状態はまずまずの難民約5000人のニーズに対応する。施設は簡単な作りにし、診察、基本的な治療(「新救急保健キット→67節」の医薬品〈drugs〉を使用)、経口水分補給治療、傷の手当てなどの臨床処置(HIV感染の危険があるため注射はしない)、鍵のかかる小さな薬局、簡単な器具と消毒設備(電気は使えないかもしれない)、データ収集(患者と処置を記録する記録簿)などの設備を整える。水と衛生設備は、すべての保健医療施設に必要不可欠である。

 

保健センター

78. 診療所/ヘルスポストを支援するため、各難民居住地(人口約1万〜2万人)に保健センターを設ける。大規模な居住地では、複数必要かもしれない。保健センターは、内科・産科・外科の重病患者以外には対応できるようにする。基礎検査サービス、本格的な薬局、難民2000〜5000人あたり1床程度の入院患者用ベッドなど、診療所より多くの設備を備える。また、各診療所やヘルスポストから健康情報を集めてまとめる。さらに、主な保健計画(EPI〈→32節〉、リプロダクティブ・ヘルス、結核)を策定し、職員の指導と教育訓練(第1、第2レベル〈第73節、および付表2〉での両方)を準備する。

 

79. 必要な保健職員の数と資格は、付表2に示した。

 

紹介サービス

80. 保健センターは、治療が必要な患者を病院に紹介する役割をはたさなければならない。

 

 

 

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