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60. 難民の心理社会的問題(心的外傷後ストレス障害を含む)については、まだ経験が十分ではないが、ここでは一般的な指針を述べる。精神衛生(mental health)に関する計画は、どれもコミュニティを基盤とし、難民自身が中心的な役割を果たすべきである。計画は難民の文化についての確かな知識と理解に基づき、他のサービスと一体化され、開始時から長期的な持続性が確保されていなければならない。

 

対応力の強化(capacity building)

保健教育

61. 保健教育の重要性は広く認識されている。だが最も危険な状態に直面している人々に、長年の習慣を変えるよう説得するのは非常に難しい。

緊急事態の段階の保健教育では、当面の公衆衛生に直結する問題を優先する。

 

62. したがってこの段階での保健教育は、排泄物や廃棄物の処理、水の管理と個人の衛生管理に重点を置く。多くの政府や機関が、簡単な保健教材を用意している。保健衛生の基本原則とその実践法は、外部者が教えるよりも、訓練を受けた難民の教師や信望の厚い年長者が仲間に教える方が、効果が大きいだろう。後の段階で情報の伝達、教育、対話はHIVを含む性感染症の予防と抑制に重要な役割を果たす。

 

教育訓練

63. 「緊急事態」の定義が示すように、この状況に対処するには、人材をはじめ資源の大量動員が必要になる。付表2に保健サービスの組織案と、必要な職員の数と資格を示した。完全な支援体制を整えるには、必要な資格と経験を備えたコミュニティ・ヘルスワーカーやヘルスワーカー、医師、看護婦を保健センター、ヘルスポスト(health post、保健出張所)、診療所へ配置することが必要となる。だがこれら全てをすぐには確立できない。

したがって教育訓練(training)活動が有効な保健・救援計画のかなめとなる。

 

64. 計画の目標を達成するには、的を絞った教育訓練活動が必要となる。ここでは健康管の各段階における役割と責任の定義と、必要な資格の見極めが重要になる。教育訓練活動は、保健医療計画の一環として実施する。

 

医療品

65. 重要な医薬品についての方針を定めること。方針の目的は、難民の最も重要なニーズに対応するために、安全で、効き目があり、手頃な価格の医薬品の供給を確保することにある。UNHCRの事業で医薬品を発注する時は、本部の保健・地域開発課と供給・輸送課が作成した必須医薬品リストを参照する。

 

66. 医薬品の適切な使用を推進するために、標準取り扱い規則を作成する。これは様々な実施協力機関の処方を合理・統一化し、教育訓練活動を組織化するうえで役に立つ。取り扱い規則は通常、国の基準に基づく。

 

67. 緊急事態の初期は、あらかじめセットになっている救急保健キット(emergency health kits)が役に立つ場合が多い。最もよく知られているのが、多くの機関(WHO、ユニセフ、国境なき医師団〈MSF〉、赤十字国際委員会〈ICRC〉、UNHCR他)が共同で開発した「新救急保健キット(New Emergency Health Kit)」だ。緊急事態の1万人分のニーズに3カ月間対応できるようになっている。このキットは本部の供給・輸送課からすぐに入手でき、コミュニティでの健康管理や保健センターで利用できる。

 

 

 

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