HIV感染防止を最優先し「普遍的な予防策」を守りながら、コミュニティと密接に協力して、コンドームの使用教育や支給などの対策を推進する。輸血時の安全検査も怠らないこと。性感染症への対応を保健サービスの日常業務にし、性行為の相手の追跡調査も行なう。
難民に対する強制的なHIV検査は、輸血目的以外では許されない。WHOも強制検査は実施すべきでない、との方針を掲げている。
家族計画(family planning)
51. 家族計画サービスは、実行可能になり次第開始する。この問題については自由の選択があることを難民に理解させる。
リプロダクティブ・ヘルスに関するその他の考慮事項
52. 自然流産や危険な妊娠中絶など複雑な事情を抱える女性は、紹介システムを通じてケアを受けるべきである。
53. 事態が安定したら、女性器切除などの危険な伝統的慣習を根絶する計画を実施する。この問題10では、難民コミュニティとの緊密な協力が極めて重要となる。できるだけ早く難民の文化に合った衛生用品を女性に支給する。適切な衛生用品が配給されないと、女性が物的援助を受けられなくなる場合もある。
リプロダクティブ・ヘルスと若者
54. ヘルスワーカーは、特に青少年のリプロダクティブ・ヘルスへのニーズに対応できるよう注意する。若者は成人より大きな危険に直面し、適切なサービスの利用も限られている場合が多い。
55. 十分な数の女性ヘルスワーカーに、リプロダクティブ・ヘルスの教育訓練を受けさせる。これは難民の文化に合った保健サービス(コミュニティ内や保健施設での教育を含む)を提供するうえで重要となる。ヘルスワーカーは難民の中からも採用する。
結核予防対策11
56. 結核(TB)患者はここ数年、世界中で急増している。しかし死亡率や栄養失調患者の割合が高い緊急事態の初期は、結核予防は優先事項ではない。
57. 結核予防計画は、事前に専門家の助言を受け、国の結核予防計画(WHOの支援を受ける場合が多い)の一環として開始する。ずさんな計画と不適切な実施は、効果をあげるどころか、有害になりかねない。
58. 結核予防計画の成功のためには、状況が安定し「直接観察治療」12が可能になり、資金、医薬品、信頼できる検査サービス、訓練を受けた職員などが確保できてから開始する。
精神衛生13
59. 難民の心理社会的なニーズは、軽視される場合が多い。忘れられている場合すらある。しかし保健サービスは、身体と精神両方の健康をできるだけ推進すべきである。暴力や深い悲しみ、死別、恐怖とストレス、不透明な未来、無力感といった重荷が難民に強くのしかかっている状況は、容易に理解できるはずだ。
10 IOM/FOM (83/97; 90/97), Policies on Harmful Traditional Practices, UNHCR, 1997. を参照。
11 World Health Organization and United Nations High Commissioner for Refugees. Guidelines for Tuberculosis Control in Refugees and Displaced Populations, 1996.
12 「直接観察治療(Directly Observed Therapy)」とは、投薬が正しく行なわれているかなど、ヘルスワーカーが治療状況を観察できるものをいう。
13 World Health Organization and United Nations High Commissioner for Refugees. Manual of Mental Health of Refugees, 1996.