リプロダクティブ・ヘルス7(reproductive health、性と生殖に関する健康)
45. 難民のリプロダクティブ・ヘルスケアは、適切な訓練・指導を受けた職員が、以下の原則で実施する。
リプロダクティブ・ヘルスケアは、あらゆる状況で提供されねばならず、また難民、特に女性のニーズや要求に基づかなければならない。難民の多様な宗教的・倫理的価値観と文化的背景は、世界的に認められた普遍的人権に沿って尊重されねばならない。
46. 質の高いリプロダクティブ・ヘルスサービスを提供するには、多くの分野(保健、コミュニティ・サービス、保護、教育)と機関との協力が必要となる。協力することにより、それぞれの任務に基づいたリプロダクティブ・ヘルスサービスが提供できる。
47. 死亡率が高い主な疾患(はしか、下痢性疾患、急性呼吸器感染症、マラリア)に対処するための資源は、リプロダクティブ・ヘルスに転用すべきではない。緊急事態の初期にリプロダクティブ・ヘルスケアで取り組むべきポイントはいくつかあり、その主な目的は以下の通り。
i. 性的暴力への予防と対応。
ii. 「普遍的な予防策」8を尊重し、コンドームの無料提供によってHIV感染を減らす。
iii. 新生児と産婦の罹患率と死亡率が高くなるのを防ぐ。そのために清潔な家庭出産用キットを提供し、保健医療施設では衛生的かつ安全な出産ができるようにする。紹介制度を確立し緊急の妊娠合併症に対処する。
iv. プライマリー・ヘルスケアに統合された、総合的なリプロダクティブ・ヘルスサービスの供給をできるだけ早く計画する。
v. 全体を管理する保健調整官の下に、リプロダクティブ・ヘルス活動の調整責任者を置く。
48. 実行可能になり次第、難民のニーズに応じた総合的なリプロダクティブ・ヘルスサービスを実施する。これをプライマリー・ヘルスケアの体制に統合し、以下の問題に対処する。
母体の安全
49. この項は出産、出産前後のケアを含む。妊婦は全員、妊娠中に産前ケアを受けるべきである。出産はすべて、訓練を受けた保健医療従事者が立ち会う。出産に伴う緊急事態に対処するため、紹介システムを整える。産後4〜6週間以内に、母親と新生児は保健所などで栄養補給、次の子どもをいつつくるべきかのカウンセリング、母乳保育や育児についての教育を受ける。
性的暴力の防止と対応
第10章を参照。
HIV/エイズ9などの性感染症
50. HIVは貧困と社会不安が存在する場合――難民緊急事態の典型的な状況――で最も急速に広まることが経験上わかっている。
7 参照文献 United Nations High Commissioner for Refugees. An Inter-agency Field Manual on Reproductive Health in Refugee Situations, 1995.
UNFPAは、リプロダクティブ・ヘルス問題への対応計画向けにリプロダクティブ・ヘルス・キットを開発した。詳細は本部の保健・栄養室や供給・輸送課に問い合わせること。
8 「普遍的な予防措置(universal precautions)」とは、病気の伝染を抑制するためにヘルスワーカーが採用する手順や慣行を意味する。
9 United Nations High Commissioner for Refugees, UNAIDS and WHO. Guidelines for HIV Interventions in Emergency Settings, 1996.