こうすれば時間による推移を追ったり他の状況と比較でき、患者の数だけの記録より役に立つ。発生率は、付表1の表3.1と3.2のように記録する。
◆主な保健計画
◆ 緊急事態における死亡と病気の主因は、はしか、下痢(コレラを含む)、急性呼吸器感染症、栄養失調、マラリア(流行した場合)であり、これらの病気を抑える計画を優先する。
◆ その他の罹患原因には、結核、髄膜炎(meningitis)、病原体媒介生物による病気、HIV/エイズを含む性感染症、妊娠、妊娠・出産による産科3にかかわる疾患、幼児期のワクチンで予防可能な病気などがある。
◆ 難民となった精神的ストレスは、多くの場合、嫌がらせ、暴力、悲しみによって増幅される。これらが相まって身体的・精神的な余力が失われ、病気に対する本来の抵抗力が低下する。
◆ 難民、特に女性と若年層のリプロダクティブ・ヘルスの必要性に応ずるのが重要であることが、経験により分かっている。
◆ 健康に悪影響をおよぼす環境要因の是正に、早期から重点を置く。
治療
26. 医学的な治療が最も必要なのは、緊急事態の初期段階である。この時期、難民は健康への危険要素が存在する新しい環境に慣れていないし、公衆衛生上の大きな改善もされていない。治療だけでは、極度に高い死亡率を減らすという目標を達成できないかもしれないが、難民の間に保健サービスに対する信頼感は生まれるだろう。
27. 主な病気の適切な診断・治療計画を、庇護国政府の計画に従って定める。ただしそれらが、難民に合っていることが条件である。例外はあるものの、難民向けの計画実施については、必ず政府当局と事前に合意しておく。
28. 保健システムの及ばない所で出る死者も忘れないこと。多くの難民が、気づかれないまま、適切な治療を受けないまま家で息を引き取り、墓地に次々と埋葬される。優れた医者でも、保健施設での仕事に没頭し事態に気づかなかった、というミスがよく報告される。
予防接種
29. はしかは、極度に高い死亡率の原因である。特に5歳未満児では顕著である。
幼児に対するはしかの予防接種は、緊急事態の初期に不可欠となる唯一の免疫措置(immunization)である。
緊急事態中の生活は罹患のリスクを高めるため、UNHCRは、生後6カ月から12歳、場合によっては15歳まで(通常は5歳までだが)の子どもに予防接種を受けさせるよう提唱している。
30. 緊急事態の初期にはしかワクチンの集団接種を行なうかどうかは、専門家が決定する。ワクチンの集団接種は、ビタミンAの配給と一緒に行なうのが理想的だが、そのために接種時期を遅らせてはならない。接種の決定は、出身国/地でのワクチン接種率とその数字の信頼性、さらに最近の伝染病やワクチン接種状況に基づく。はしかワクチンの接種の実施が必要な場合は、他のワクチンが入手できるまで遅らせるべきではなく、また新規到着者が確実にワクチン接種を受けられる仕組みを作る。
3 産科――出産と、出産前後の女性の治療に関する医学の一分科。