配給システムは、物資の受け手が誰であるかによって分類される。
5. 緊急事態の初期は、登録や配給カードの発行ができていない時期があるだろう。しかし配給カードがなくても、物資は効果的に配給できる。
◆配給システムの構成要素
一般的な考慮事項
6. 理想的な配給システムとは、安全で、対象受益者が利用しやすいものである。
□ 安全――配給システムは、利用者全員の安全が確保されるよう組織する。女性と弱者層には特別な注意が必要となる。
□ 利用のしやすさ――配給所は、人々の居住場所に近く、特定の集団のアクセスが制限されない場所に設ける。配給の時期・時間は受益者の都合に合わせる。
7. 配給システムを最も効果的にモニタリング、管理できるのは、難民自身である。そのためには、配給物資の種類や量、利用方法や時期を、難民に伝える必要がある。
配給の量、種類、方法の変更が、常に難民に伝わるような適切なシステムを確立しなければならない。
8. 新たな事業計画、特に大規模な緊急事態の初期は、効果的な配給の管理ができない場合がある。そのような場合でも、UNHCRによる管理が徐々に確立されるような措置を当初から取っていく。例えばビニールシートやテントといった家屋資材の供給は、人口移動の抑制につながり非常に重要となる。これにより人々は1カ所に落ち着けるようになり、物資配給などのサービスを計画しやすくなる。
難民の参加
9. 難民――男女とも――に十分な情報が伝わるようにする。難民は、物資の種類や量、配給時期、配給方法を知っていなければならない。こうした情報は、難民の指導者を介さず、難民へ直接伝える。
配給プロセスを最もうまく監視・管理できるのは難民である。難民が配給プロセスを確認できるようにする。
すべての配給プロセスに難民を参加させる。ただし、難民を真に代表していない指導者が参加する危険性に注意する(第7章を参照)。
10. 配給サイクルが不規則だと、受益者の信頼が徐々に失われ、難民は制度の抜け穴を見つける必要に駆られる。
輸送・供給上の考慮事項
11. キャンプでは、受益者が自分の近く(5キロ以内)で毎月定期的に物資を受け取れる配給システムを確立する。難民の住居が散在する場合でも、配給所までの距離が5〜10キロ 以上にならないようにする。
12. 食糧を配給する場合は、普通、未調理の乾燥食品をまとめて配給するのが望ましい。一般配給として、調理済み食品を大量配給するのは避ける(第15章を参照)。
管理上の考慮事項
13. 救援物資の配給には、政府、WFP(世界食糧計画)、NGO(非政府組織)など複数の機関と多くの人がかかわる。当事者全員の定期的な会合を含め、調整体制を確立しなければならない。会合の開催頻度は状況次第で決まる。緊急事態の初期は毎日必要だろうが、状況が落ち着いてくれば、月1回に減らすことができる。