日本財団 図書館


設定されたテントの耐用年数は、気候や居住者の手入れによって異なるが、2〜3年にもなる場合がある。テントを使う場合は、居住者に修理材料を提供する。もっと適切な住居を建設している間、複数のテントを仮の住まいに使う場合もある。標準仕様については第18章の付表1を参照のこと。

 

82. テントは垂れ幕で覆うようにし、テントに直射日光があたらないように保護する。内部は、どの場所でも人が立てる高さにする。キャンバス地の壁と屋根では、熱が逃げるのを防げないため、テント内を暖めるのは難しい。しかし良質の、密閉されたテントなら、テント用ストーブである程度暖房できる。このテント用ストーブで快適な温度を維持するためには、24時間燃料(通常、薪か灯油)を絶やせないので燃料費が高くつく。したがってテントは寒冷地の住居には向かないが、他に方法がない場合は、より適切な住居ができるまで人命を保護する一時的な避難所となる。

 

プレハブ住居

83. プレハブ住居や、特別開発された緊急事態用住居は、たとえ冬場向けに設計されていても、大規模な難民緊急事態では有効でないことが分かっている。その理由には以下が含まれる。

i. 単価が高い。

ii. 輸送に時間がかかる。

iii. 生産に時間がかかる。

iv. 輸送上問題がある。輸送費もかかる。

v. 柔軟性がない。

通常は、こうした設備が到着する前に、すでに緊急事態用住居の準備ができている。

 

寒冷地向け住居

84. 雨や雪を伴う寒さが長期間(3〜5カ月)続くと、人は屋内にとどまる生活を強いられる。特に、高齢者、幼児、病人、障害者などの弱者層には、暖房付きの部屋が必要だ。

 

85. 寒冷条件に耐える住居は高い水準を要求され構造も複雑で建設費が高くつく。以下の点を検討する。

i. 壁、屋根、ドア、窓による防風。

ii. 簡単な仕切りのついた、冷気を遮断する部屋。

iii. 暖房用ストーブ。

iv. (雪の重みと強風に耐える)安定した構造。

v. 室内にあり暖房のきく調理場と衛生施設。

 

86. 緊急事態下で、人々が寒冷気候をしのげるよう、以下の点を重視した対策を取る。

i. 人命

体温を奪われないよう身を守ることが極めて重要だ。特に就眠時は、毛布、寝袋、衣服、靴、高カロリー食品で熱を作って維持し体を暖めるようにする。

ii. 居住空間

一定の居住空間の作りを強化し、冷気が入らないようにすることが非常に重要だ。これはビニールシートとテープで部屋を密閉すれば可能となる。窓とドアは、枠に半透明のビニールシートをとめて覆う。広い部屋は、ビニールシートか毛布で仕切るといい。新しい建物を建設する時は、冷気が入り込まないように密閉した空間を作る。居住スペースの壁、天井、床は、冷気を遮断し、暖気をできるだけ効率良く維持できるように設計する。

iii. 暖房

住居内を快適な温度(15〜19℃)に保てるかどうかは、おもに外気温、建築物の種類、遮断性、建物の向き、ストーブの種類と能力によって決まる。これらの条件によるが、ほとんどの寒冷地で5〜7キロワットのストーブにより40〜70平方メートルの空間を暖められるはずである。通常、暖房用ストーブは料理やパン焼きにも使われる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION