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したがって住居のほかに、十分な毛布、適切な衣類、暖房器具の提供は優先項目となる。

 

73. まず、難民自身が作った緊急事態用家屋が適切かを調べ、地元物資の簡単な供給によって当面のニーズを満たす。

適切な住居提供のカギは、屋根の提供である。

家屋全体の建材を提供できない場合は、屋根となる適当な資材の提供が優先される。壁は、土ないし(キャンプ)用地内や地元で入手できる材料で作ることができるからである。

 

74. 難民は、必要な組織的・物資的な支援を受けながらも、可能なかぎり自分で住居を作るか、住居作りに参加する。これによって住居は難民固有のニーズに対応できるようになり、難民の依存心を抑え、コストも大幅に削減できる。

 

住居の種類

75. どんな場合でも、家族単位の住まいが集合施設より望ましい。必要なプライバシー、精神的やすらぎ、安心感が得られるからである。また、人や持ち物も安全であり、家族がまとまっていられる。

 

76. 緊急事態用における住まいのニーズは、難民や地元住民が通常使っている資材や住居によって満たすのが一番良い。緊急事態住居用の資材を国外から持ち込むのは、地元で十分な量を迅速に確保できない場合に限られる。最も基本的な構造と、労働集約的な工法が望ましい。資材は環境に配慮し、環境を破壊しない方法で集める。

 

基準

77. 緊急事態の初期は、少なくとも床面積の最低基準を満たす住まいを建てられる資材を、難民に提供することを目標とする。緊急事態における床面積の最低基準は以下の通り。

i. 熱帯地方や温暖地域では、調理施設または台所を除いてひとりあたり3.5平方メートル以上(屋外で調理することを想定)。

ii. 寒冷地や都市部では、台所と入浴設備を含めてひとりあたり4.5〜5.5平方メートル。

 

78. 可能なら、居住者が自分のニーズに合わせて改築できる余裕を残した住居設計をする。例えば寒冷地では、特に子どもや老人は1日中屋内にいる可能性が高いから、より広いスペースが必要である。

 

ビニールシート

79. ビニールシート(plastic sheeting)は、多くの救援事業で最も重要な住居用物資である。市街地では、紫外線防止の丈夫な特殊ビニールシートで屋根を修理できる。窓は、半透明の補強されたパネルで修理できる。テントと緊急避難所の場合、反射性、紫外線防止性の防水シートが使える。

 

80. 住居の支柱や骨組みに周辺の森林から集めた木材を使うと、大きな環境破壊になりかねない。したがって、ビニールシートを支えられる強度の支柱素材を必ず供給することが重要となる。支柱素材は、環境が保全され、再生可能な供給源から調達する。入手できれば竹が理想的である。ビニールシートの標準仕様については第18章の付表1を参照のこと。

 

テント

81. テントは、建材が全く入手できないか特定の季節しか入手できない場合、または遊牧民系の難民には有用で適切かもしれない。

 

 

 

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