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キャンプ近隣における薪・木材の伐採・収集管理とは、伐採してはならない地域と樹木を定め、表示をつけるなどして枯木のみ収集できるようにすることなどである。薪の収集についても明確なルールを最初から定め、地元資源の尊重を促す環境意識向上計画を立てる。特定地域の管理・収集責任を特定のグループに任せる。

 

54. キャンプ周辺外からの薪の調達(トラック輸送など)、調達方法、必要量は状況に応じて決定しなければならない。薪や灯油など、他の燃料の組織的な調達は複雑な影響をもたらす恐れがあるので、慎重に行なう必要がある。燃料を無償で定期的・組織的に調達することが適切なのは、他の方法での燃料入手が厳しく制限されているなど、特別な場合に限られる。地元で容易に薪が手に入る場合、キャンプ周辺外からの薪の無償配付は、薪の消費増につながる恐れがある。さらに、調理用の薪が無償で提供されても、地元の天然資源以外に収入源のない難民たちは、薪や木材の販売、炭の製造などで収入を得るための伐採収集を続けるだろう。したがってその価値を保つために、通常、薪は作業の見返りとして提供する。

 

55. 難民に供給される木材の供給源と供給の影響も検討する。

i. 持続可能な形で伐採されているか。

ii. 環境問題を別の場所に転嫁しているだけではないか。

 

地元の独占的な供給業者が出現しないよう注意する。最後に、緊急事態の初期段階で燃料の無償供給を行なうと、後でその仕組みを変えるのは難しい点に注意する。

 

56. 用地と近隣地域の、より包括的な天然資源の管理計画をできるだけ早く作成する。必要なら専門家の助言を受ける。

そのような計画は、基本的な環境調査に基づく。

包括的な天然資源管理計画には、上記の燃料用木材の採集管理に加え、燃料節約型コンロや燃料効率の良い調理法の推進、おもな省エネ道具(フタつき調理なべ、ひきうす又は製粉済み穀物など)の供給、意識向上計画が含まれる。また家庭菜園や植林・必要なら森林再生のために既存の天然資源を有効利用(廃水、共用地、住居周辺地の利用など)ができるかどうかの確認も計画に含む。

 

ジェンダー(性差)に関する検討事項

57. 緊急事態では、正常な社会参加の機会が失われたり、人口構成が変化して、価値観や原則が変わってしまう場合がある。このため女性を保護・援助する伝統的な仕組みも崩壊している可能性がある。難民コミュニティ内のこうした社会構造の変化は、以下の事態をもたらす可能性がある。

i. 女性を世帯主とする家庭の増加。

ii. 保護者のいない子どもの増加。

iii. 男性の不足。

iv. 大家族制度の崩壊。その世話役としての機能も失われる。

 

58. 用地計画では、女性のニーズへの配慮が重要だ。伝統的に女性がコミュニティの指導体制に参加していない場合、女性と接触するのが難しいかもしれない。その場合は、コミュニティ・ワーカーの助けを借り、女性の保護と安全に関する意見を集める。

 

59. 難民のなかには、自分の家屋を作れない弱者がいるかもしれない。このような場合、難民のコミュニティ自体が、弱い立場の難民の家屋作りを支援する仕組みを作るよう特別な措置を取る。

 

 

 

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