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これらの数字はあくまで参考にすぎず、実情に応じて調整する。

 

48. 最小単位に基づく計画とは、必ずしも用地を碁盤の目のように整備することではない。平行に走る道で用地を正方形や長方形に区切る設計は、簡単ですぐに実施できるため、これまでもしばしば利用されてきた。しかしこうした設計は人口の過密を招くため、硬直した碁盤目調の設計は可能な限り避ける。環境上の理由による健康問題や病気は人口密度に正比例するからである。どのような設計にするにしても、自然の特徴と難民コミュニティの独自性に配慮する。

 

49. 社会的な構造、背景、家族構成はどれも用地の設計に影響を与える。こうした情報の入手は、基本的な問題とニーズを把握する作業の一部であり、まず難民や難民社会に詳しい人との話し合いを通じて集める。難民に対する社会経済的な詳細調査は、資金と人員に余裕ができ次第行なう。この調査は、その後の計画立案、特に難民の自立(self-reliance)と恒久的解決のための計画立案で重要となる。

 

環境上の検討事項

50. 緊急事態の最初から、環境上の検討事項を、用地の計画と住居に取り入れる必要がある。難民キャンプの場所と設計、緊急事態用住居への援助、地元資源(local resources)の建材や燃料への利用、は環境に大きな悪影響を与えかねない。緊急事態の初期段階で最大の環境破壊(environmental damage)が起こりうる。こうした環境破壊は、難民と地元住民双方の健康、社会、経済に影響を与え、政治的な波紋を生む場合もある。

 

51. 破壊された環境の修復は、実質的には、まだ事態が緊急状態にある段階で始める。事態の初期に環境対策を講じれば、環境破壊によるコストも大幅に縮小できる。

 

52. 環境保護を通じて難民と地元住民の福利を守るためには、以下の対策がある。

i. 用地選び――環境保護地域は避ける。可能なら、環境保護地域から徒歩で1日はかかる場所を選ぶ。

ii. 用地造成――既存の植生と表土を保全する。

iii. キャンプの人口密度と広さ――通常、居住地の規模は小さいほど良い。

iv. キャンプの設計――配置設計、特に道路は等高線に従う。これにより侵食が抑えられ表土が保全され、ガリー(雨水の浸食による地割れ)も防止できる。家事の場を1カ所に集めるように設計すれば調理場など資源の共有を促し、燃料消費も抑えられる。治安の維持にも役立つ。

v. 住居の設計(断熱によるエネルギー節減)――寒冷地の冬は長く、常に暖房が必要なため、屋根、壁、床の十分な断熱など間接的なエネルギー節減対策が、燃料の節約と費用効果の向上に大きな成果をもたらす。

vi. 家屋と燃料――家屋と燃料用の物資は、キャンプのごく近くで調達される場合が多い。建築・燃料用の木材を含む地元の天然資源については、初期段階から管理・統制システムを作ることが極めて重要となる。事態の初期において家屋用の建材を地元資源で賄うことは、特にひどい環境破壊につながりかねない。従って、こうした資材の収集は慎重に管理するか、別の供給源から調達する。

 

53. 簡潔な天然資源の管理計画を、できるだけ早く作成する。基本的な計画の重要点は、薪(たきぎ)用木材の伐採・収集の管理となる。これについては、営林局など政府機関と協議する必要がある。

 

 

 

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