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安全と保護

31. 原則として、受け入れ国による難民庇護は、出身国への敵対行為ではない。しかし難民の安全と保護を確保するためには、国境や軍事施設など、微妙な地域と難民居住地の間には相応の距離を置くことが望ましい。

OAU難民条約は、次のように定めている。「安全上の理由から、庇護国は可能な限り、難民を出身国の国境から相応の距離をおいた場所に居住させる」。1

この原則に例外が認められるのは、例えば早期自主帰還の見通しがはっきりしていたり、安全上・保護上の状況が許すなど、より難民の利益にかなう場合に限られる。

 

地形、水はけ、土壌

32. 水が容易に確保できる場合は、水はけが用地選びの重要な基準となる場合が多い。用地全体を、洪水が起きやすい地域より高い位置、できれば緩やかな傾斜地(2〜4パーセントの勾配)に置く。勾配が10パーセント以上だと使いにくく、面倒で費用のかかる土地造成が必要となる。平地の場合、排水や雨水の水はけが深刻な問題となる。雨季に沼地になったり、浸水しがちな場所は避ける。

 

33. ピット(便槽)式トイレを設置し、有効に機能させるためには、吸水性の高い土壌が重要になる。下層土は浸透が良くなければならない(つまり土壌が水分を吸収し、トイレに固形汚物が残る)。砂質が非常に多い土壌は、浸透には優れているが、穴の安定は悪い点に留意する。地下水を飲み水に使っている場合は、ピット式トイレによる汚染を防ぐために特別な注意が必要となる。トイレ用の穴が地下水源に達しないようにする。地下水源は、最低でも地下3メートル以上深くなければならない。

 

34. 岩石が過度に多い土地や浸透性の悪い土地は、住居とトイレを設置しにくいから避ける。可能なら、菜園と小規模農業くらいはできる用地を選ぶ。

 

アクセスの良さ

35. 用地は、食糧、調理用燃料(cooking fuel)、家屋資材など必需品の供給源に近く、アクセスも良くなければならない。国の業務(サービス)、特に保健サービスに近いことが望ましい。道路は「全天候型」(雨季使用可)で、年間を通じて使える必要がある。キャンプ開発の一環として、幹線道路と用地を結ぶ短い進入路を作る場合もあろう。町に近い用地は利点もあるが、地元住民と難民間の摩擦に配慮する必要がある。

 

気候条件、風土病その他の危険要因

36. 衛生環境上、大きな問題――マラリア、オンコセルカ症(糸状虫症)、住血吸虫症(schistosomiasis)、ツェツェバエなど――がある地域に居住地を置くべきではない。用地は、鉄砲水など予期せぬ異常な(ただし地元では知られている場合が多い)事態や、深刻な産業汚染に見まわれる場合がある。ほこりが多い地域では、日常的なほこりのために呼吸器疾患が増える可能性がある。緊急事態用の避難所や仮住居は暴風から守られなければならないが、日常的なそよ風程度は都合が良い。気候条件は年間を通じて適当であることが望ましく、季節の変化には慎重な配慮が必要だ。乾季は良くても、雨季には住めない場所もある。同様に、山岳地帯は夏の間は快適かもしれないが、冬の気温は零度を大きく下回る場合がある。季節の変化は、住居の種類とコスト、インフラ(生活基盤、infrastructure)、暖房燃料、食事にまで大きな影響を与えうる。可能な限り、難民がなじみの気候と大きく異なる場所に移住させられないようにする。

 

1OAU難民条約、第二条の6

 

 

 

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