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◆はじめに

 

1. 庇護を与えるなら、生活場所の提供は当然の措置である。緊急事態キャンプの設計、インフラ、住居は、難民の安全と福利に重大な影響を与える。したがって人道的対応にかかわる他の重要分野、すなわちコミュニティ・サービス、水(water)、環境衛生、保健、教育、食糧配給、ロジスティクス、森林管理、環境との調整が必要である。

 

2. ほとんどの難民事業は、当初の予想より長期化する。したがって費用効果が高く、持続的なインフラと住居を初めから計画する。キャンプの予想存続期間は、用地選び、キャンプの計画立案、難民事業の実施に影響を与える。

 

3. 用地選びにおいて、政府当局は明白な役割と責任を担っており、非常に重要である。同様に、難民自身ができるだけ早くから参加することも重要となる。難民のニーズに合った用地の場所、広さ、設計が理想だが、実際には、難民のニーズと実務的・政治的な外部要因の間で妥協点を見い出す必要がある。

 

4. 用地選び、計画立案、住居が優れていれば、以下が実現できる。

i. 人命を救い、コストを抑える。

ii. 後で困難な是正措置を取る必要性を最小限にとどめる。

iii. 公共設備、サービス(援助業務)、インフラの提供を円滑にし、費用効果を高める。

iv. 土地、人的・物的資源、時間を最も効率的に使用する。

 

5. 緊急事態における難民の居住形態は、通常、以下のいずれかに当てはまる。

i. 分散居住

ii. 集合居住

iii. キャンプ居住

 

分散居住

6. 分散居住とは、難民たちが避難地区にすでに暮らしている家庭に滞在する場合をいう。難民は以前からいる世帯と同居するか、近くに仮の住まいを作って、水、衛生、調理等の設備をすでに暮らしている家庭と共同で使う。

 

7. 滞在先は、親戚や同じ民族の世帯である場合が多い。この居住形態は、農村部と都市部の双方でみられる。その利点は――

i. すぐに実現できる。

ii. 行政的な支援の必要性が限られている。

iii. コストが抑えられる。

iv. 自立・自給を促す。

v. キャンプと比べて地元の環境に与える影響が小さい。

 

8. 欠点

i. 受け入れ家庭と社会が、負担に耐えきれずに窮乏してしまう。

ii. 受け入れ住民と難民の区別が困難になる。これは難民人口の概算と登録が必要な場合、問題となりうる。

iii. 難民が集合して居住している場合と比べ、保護上の問題を発見しにくくなる。

iv. 難民だけでなく、受け入れる立場にある住民も、住居その他の援助を必要としている可能性が高い。

 

集合居住

9. この居住形態は、学校、兵舎、ホテル、体育館など既存の施設に難民が居住する場合をいう。こうした施設は通常市街地にあり、一時的な、あるいは他の場所へ移るまでの仮の滞在場所と意図されている場合が多い。この居住形態の利点は――

i. こうした施設では、普段、人が暮らしているわけではないので、庇護地域の住環境を壊さず直ちに難民を収容できる。

ii. 水や衛生といったサービスをすぐに利用できる。

 

 

 

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