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63. 性的暴力のトラウマ後の反応には、恥辱感と罪悪感、怒り、屈辱感、悪夢、引きこもり、抑うつ状態、自殺志向などがある。こうした反応に留意し、家族、友人、コミュニティ支援グループは、暴力の被害者に対する理解と援助に務める。

 

64. レイプ被害者に対する社会的態度は、一般に、極めて否定的である。レイプによって妊娠した女性が、家族やコミュニティに受け入れられるよう、あるいはレイプを受けた結果出産した子どもを養子に出せるような支援を必要となるだろう。レイプの被害者の女性や男性は、普通の生活を送るために現在の居住地を離れなくてはならない場合もある。特にレイプされた結果、出産した女性がこの状況に置かれるが、そうなると家族の支援も得られなくなる場合もある。また、典型的なトラウマ後反応として、女性はレイプの結果産んだ子どもに対し憎悪を抱くこともある。

 

65. それぞれの事例に関する書類は、徹底して秘密扱いにする。法的手段に訴えるか否かは本人の選択次第である。訴えない決断の背景には切実な理由があるかもしれない。被害者が法的手段――大きな苦痛を伴う――に訴えれば、手続きの全段階で支援と保護が必要になる。どの程度の保護とケアが受けられるかをあらかじめ被害者に正確に知らせる。

 

66. コミュニティ・サービス、保護、保健の各担当職員は、レイプや性的暴力の被害者を支援するために協力しなければならない。保護職員は、法律に関する情報を提供したり、告訴が受理された場合は訴訟手続きをモニタリングできる。保健職員は、必要な治療施設と書類を利用できるようにする。コミュニティ・サービス部門は、被害者本人や家族と直接協力すると同時に、支援グループを結成したり、レイプ問題に対して難民たちの一般的認識をより高める。UNHCRコミュニティ・サービス・チームを補完できるような難民のチームを設置して、名のり出たがらない女性も支援する。

 

障害者

67. 障害者は、他の難民が利用できる物資、サービスを利用しにくいかもしれず、障害者でもこれらのサービスを利用できるようにする対策が必要である。障害児が、なんらかの学校教育を受けられるようにする措置もそのひとつである。難民緊急事態で――むしろ帰還民の場合に多いが――地雷の危険がある場合は、さらに障害者を増やさないために、直ちに広報活動を開始しなければいけない。障害者に対する初期のケアは家族とコミュニティを通じて実施すべきだが、リハビリテーション・サービス(車椅子、松葉杖など)の早期導入も必要だ。障害者をケアするための、コミュニティに基づいたリハビリ活動は、緊急事態の初期から推奨する。

 

高齢者

68. コミュニティに高齢者がいると、結束と帰属意識を強化できる。しかし身体的な衰えのために、移動や基本的サービスの利用が制限される場合がある。最も危険な状態に置かれるのは、独り暮らしの高齢者や幼児の面倒をみている高齢者である。

高齢者は難民人口のかなりの割合を占める場合が少なくないにもかかわらず、見過ごされることが多い。

 

69. 補助給食計画に高齢者を含めるよう配慮する。たとえ食糧の配給を受けられても、高齢者は移動の自由がきかないため、調理に欠かせない水や燃料の確保がむずかしくなるかもしれない。

 

 

 

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